JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 5年前に長男が生まれたのを機に、父の農地を転用して分家住宅を建てました。我が家で親子は平穏に暮らしてきたのですが、このほど事情があって夫と離婚することになりました。子の親権と養育、慰謝料等のほか夫名義の住宅をどうするか悩んでいます。私の父親は「自分の土地に他人の建物が存在することは煩わしい」として、(1)住宅借入金は夫が返済して住宅を慰謝料として妻に贈与する案。(2)夫の住宅借入金を妻が肩代わりすることを条件に、住宅を夫から妻に贈与する提案をしています。離婚に伴う慰謝料や建物の贈与に対して税金がかかりますか。

回答

西田税理士

離婚に伴う慰謝料と財産分与

 離婚の原因を作った相手方に対する損害賠償としての慰謝料、夫婦の協力によって取得造成した財産の精算たる財産分与は、原則としていずれの側にも課税関係は発生しません。ただし、財産分与や慰謝料の額が夫婦の協力によって得た財産の額、離婚に至る一切の事情を考慮しても過大であると認められる部分については贈与税が課税されることになりますから留意してください。なお、慰謝料や財産分与の代わりに建物を相手側に引き渡した場合は、その建物の時価により譲渡があったものとされますが、建物の帳簿価額が時価額ですから譲渡益は発生しないことになります。

夫が妻へ住宅を贈与すると

 ところで、(1)のように夫が妻へ慰謝料や財産分与額に相当するものとして住宅を贈与した場合。贈与を受けた妻には贈与税は課税されませんが、夫は引き渡した住宅を慰謝料や財産分与相当額で譲渡したものとして譲渡税が課税されることになります。つまり、夫は妻に慰謝料や財産分与額で住宅を買い取ってもらったことになるのです。この場合、夫は住宅の借入金を全額返済して建物を妻に引き渡したとしても、夫の譲渡税の計算上考慮されるものはありません。なお、夫が借入金を引き続き割賦返済していく場合は融資先から妻が連帯保証人になることなどを求められることがありますから留意してください。夫の返済が滞ったときは弁済を求められたり競売に付されることがあるからです。

妻が建物を引き取った場合

 そこで、確かなのは、(2)のように残っている夫の住宅借入金を妻が割賦又は一括返済する(負担)ことを条件に夫から住宅の贈与を受ける案。夫は引き受けてもらう借金を譲渡対価にして妻に住宅を譲渡する負担付贈与です。夫は所有する住宅を借入金相当額(妻が引き受ける)で売却したものとして譲渡所得を計算する必要があります。妻は住宅を貰う代わりに借入金という債務を負担することから贈与税は課税されません。なお、妻は夫の借入金をそのまま承継するか借換をするかについて事前に融資先と負担方法等を協議しておく必要があります。できれば住宅資金の借入金として団体信用保険への加入や住宅ローン控除の要件を残しておきたいものです。

住宅の時価額の計算

 この場合の住宅の時価(住宅の元値のこと)は、購入した価額をもとにして計算した減価の額を控除した残高(いわゆる帳簿価額)になります。減価の額は木造モルタル住宅であれば耐用年数は20年、生活用に使っている場合はその1.5倍の30年で償却した5年間の減価の額です。3,000万円で取得した建物であれば減価の額は510万円、帳簿価額(時価額)は2,490万円ということになります。借入金残高が2,700万円の場合は210万円の譲渡益があったことになります。なお、居住用財産を譲渡した場合の特別控除や軽減税率の特例を受けることができます。

不動産取得税 登録免許税

 贈与などによって住宅を取得した妻には、所有権移転登記の際に登録免許税が、取得後まもなく不動産取得税がかかることになります。取得した年度の住宅の固定資産税評価額に対して登録免許税はその2%(不動産取得税は3%)相当額になります。