JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 私は農家の長男で45才の平均的なサラリーマンです。高校生と二人の中学生を抱えこれから教育にいくら金がかかるか心配です。将来家に戻って農業を継ぐことになっていますが、借家が狭くなってきたので居宅を新築しようと考えております。父と三人の兄弟でこれからの相続対策を話し合ってみたいと思っております。どんな点に留意したらよいでしょうか。

回答

父が語る我が家の相続

まず、お父様が考えておられる我が家の将来像とご家族への思いを語っていただくことから始めましょう。実家を離れて暮らす跡取の役割、家業はいつ引き継ぐべきか、父にとって生涯の課題は何か、弟妹の自立と必要な財産、家族の生活設計などを率直に話し合うことが大切だと思います。

相続も生活設計の一コマ

 5年後、10年後、20年後における家族の年齢とその時の出来事を想定して今何をすべきかを考えこれに備えるのが生活設計です。子育てと教育、子の結婚と独立、孫の誕生、子の住宅取得、親の相続など子供の成長の節目をとらえて、その時いくらかかるか、それは何で準備するのか、親はどんな役割を果たすべきかなどを丁寧におさえて行くと将来がはっきり見えて来るものです。教育は子育ての集大成 子ども達が世界に伍していくには語学と個性的な人づくりが欠かせないと云われています。これからの教育はますます多様化し専門的になるから教育費が家計に重くのしかかってきそうです。統計によると幼稚園から大学まで全て私立に在学した場合、学校に払い込む費用の平均額は1,444万円になるとのこと。そこで、子育ての家計の負担感を軽減するために父母や祖父母から30才未満の子や孫ひ孫へ、教育資金として一人当たり1,500万円まで一括贈与できることになりました。子ども達の将来の教育の機会が保障(信託)されることになります。

障害者のための扶養信託

 生活能力の乏しい相続人の親亡き後の保障の在り方も生活設計のテーマです。とくに、重度(中程度の知的障害や精神障害の人を含む)の障害者の生活の安定のために特定障害者を受益者とする信託契約を結ぶと、その受益権については6,000万円まで非課税とされています。生前に生涯扶養を約束できるので相続財産から準備するよりはるかに有利な制度といえます。

住宅の取得は生活の基盤づくり

 子が住宅を取得するには、親が単独で取得して子に貸す法、子が必要資金を借入れて取得する法、親子で資金を出し合い共有で取得する法、親から取得資金の贈与を受けて取得する法などが考えられます。いずれの方法によるかは本人の貯蓄や返済能力に左右されますが、給与収入の伸びが期待できない時代だけに親の援助に頼るところが大きいのです。

住宅取得資金の贈与の特例

 若年世代への資産の早期移転と住宅の取得促進を目的に、父母や祖父母から子や孫が住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税措置が講じられています。平成26年中に耐震又は省エネ住宅など一定の要件を満たす住宅を取得する場合は、1,000万円まで非課税とされます。教育資金、障害者扶養信託財産とともに非課税の贈与ですから相続開始前3年以内に贈与されたものでも相続財産へ持ち戻しする必要はありません。

小規模宅地の評価の特例

 相続税額を計算する被相続人が住んでいた居宅の敷地のうち240m2(平成27年以後に開始する相続からは330m2)まで20%とする評価の特例があります。この特例は、被相続人と同居していた相続人か、自分(その配偶者を含む)の持家に住んだことのない相続人が相続で取得した場合に適用されるものですから居宅の新築や実家へ戻る時期によってこの特例を受けられないことがありますから留意してください。

生前贈与は効用が大きい

 現役時代に蓄えた預貯金は現在と将来に振り分けて使うと老後の安寧が保障され、子や孫の成長と自立を見届けることができます。生活を改善するための支出、生活設計に裏打ちされた生前の贈与は無駄がなく有益で節税になります。相続が始まった時に使い途のはっきりしない多額の預貯金があると、相続税を余計に負担することになり争いの原因にもなりますから留意しましょう。