JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 相続対策として生前贈与を考えています。

 暦年贈与と相続時精算課税贈与のどちらが有利に贈与できるでしょうか。

 贈与をする場合に留意すべき点はどんなことですか。

回答

 平成27年1月1日から始まる相続では基礎控除が現行の60%に引き下げられ、最高税率が55%まで引き上げられることになり相続税の増税が予定されています。

 子や孫への贈与税がちょっぴり(5%~10%)軽減されたこともあって、今のうち遺産を軽くしておこうと相続税を意識した生前贈与への関心が高まっています。

 財産を減らすことに腐心するあまり、他の相続人を説得できない110万円の贈与を繰り返したり、ローンの肩代わりや家族名義にした預貯金、直前に払戻した多額の預貯金、契約者を家族とする一時払いの共済契約など申告後の税務調査でも指摘される事例が増えていますから留意してください。

 生前贈与は相続計画を伴ったものでなければ本当の効果はありません。

 我が家の生活設計と家業を見直して、将来誰に何をやってもらうかを決め必要な財産を仕分けすることから始めましょう。

 生前に移しておくべきもの、相続で取得させるものの優先順位をつけたうえで贈与を実行していきましょう。

 税法にも理に適った特例がたくさんあります。

 子の独立を支援するのであれば「父母や祖父母から子や孫への住宅資金の贈与の非課税」、「教育資金の一括贈与の非課税」、後継者の経営基盤を確たるものとするための「農地の生前一括贈与」、老後の生活拠点づくりのための「配偶者への居住用財産の贈与の配偶者控除」、「特別障害者のための障害者扶養信託」など、無税であげられる制度は大いに活用したいものです。目的と実体を伴った生前贈与であれば、相続税の実効税率(相続財産価額に対する相続税額の割合)と贈与税の実効税率(贈与財産価額に対する贈与税額の割合)を比較しながら贈与していくと節税しながら相続対策をすすめることができます。

 ちなみに、相続人を配偶者と子ども3人とし、相続財産が3億円あった場合の改正後の相続税の総額は5千80万円ですからその実効税率は16.9%になります。

 一般の贈与税の実効税率が16.9%になる暦年贈与(毎年110万円の基礎控除のある贈与)では一人当たり733万円に相当しますから、一人当たり733万円を目安に贈与するとその効果があります。

 なお、遺言や遺産分割などによって遺産を取得した人が、相続開始前3年以内に贈与を受けている場合は、生前贈与された財産を相続財産に加算する必要がありますから留意して下さい。相続税の門番たる贈与税があるために次世代へ財産の移転が進まないとして、平成15年分から相続時精算課税制度が設けられました。

 65才以上の父母から20才以上の子へ(27年からは60才以上の父母、祖父母から20才以上の子や孫へ)実効税率など気にせず、生前に移しておくべき財産を2500万円まで無税で、しかも20%の定率の贈与税を前払いしておき相続時に相続税と精算するというものです。この制度は、一度選択すると暦年課税に戻ることはできません。

 相続税の申告が義務づけられていますが、精算課税贈与と合わせても遺産が基礎控除以下で、贈与税を納付していなければ相続税の申告は不要です。110万円以下の贈与でも申告しなければなりませんが、2500万円まで無税で贈与できるのが魅力といえます。

 相続時精算課税制度による贈与は、贈与時の価額を相続財産に加算することから将来値上がりする場合に節税効果があります。

 一方、この制度によって取得した財産を物納することはできず、農地についての納税猶予も認められません。居宅敷地などには小規模宅地の評価減の特例は適用されないので留意しなければなりません。