JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

「非嫡出子の相続分は? —『嫡出子と平等』で協議を」

質問

 父Aが平成15年に亡くなりました。相続人は、Aの嫡出子B、Cと、Aの非嫡出子Dの3人です。遺産は総額9000万円です。もめていてまだ遺産分割が済んでいません。この場合、Dの相続分は、B、Cと同じでしょうか。

回答

 従前、被相続人の非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1と定められていました。しかし、平成25年9月4日、最高裁は、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた規定(以下「本件規定」といいます)は憲法の法の下の平等に違反するとして無効としました(最高裁大法廷平成24年第984号事件決定)。この結果、非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分と平等となりました。最高裁の上記決定は、遅くとも平成13年7月当時において、立法府の裁量権を考慮しても嫡出子と非嫡出子との法定相続分を区別する合理的根拠は失われていたとして、平成13年7月に開始した当該事件の相続に関して本件規定を適用できない、つまり、法定相続分を同じとするべきとしました。しかし、同時に、既に相続人間で、本件規定を前提として、遺産分割協議が成立したり遺産分割調停が成立している等、関係者間で法律関係が確定されている事案には、本件規定の違憲無効を理由として、既に成立した法律関係を覆すことはできないとも判示しました。ご質問の場合、未だ遺産分割協議中ですから、嫡出子B、Cと非嫡出子Dとの法定相続分は等しいもの(3分の1)として、遺産分割協議をすることになります。

「賃貸物件に知らない人が—一まず、仮処分で人物特定」

質問

 私は3年前に建物をAに賃貸しました。ところが1年前にAは無断でどこかへ転居し、現在は正体不明の第三者が住んでいます。家賃も1年以上滞納しています。この場合、誰を相手方として明渡請求すればよいですか。

回答

 話合いにより、正体不明の第三者を立ち退かせることは困難なことです。従って、法的手続き、つまり貸主が建物明渡訴訟を提起し、その勝訴判決に基づく強制執行により、建物の明け渡しを実現するのがよいでしょう。

 この場合、誰を相手方にして訴訟を提起するかについては、賃借人Aのほか、現実に建物を占有している第三者も相手方にすることが必要です。Aに対して勝訴判決を得ても、その効力は第三者に及ばないからです。

 ところで、正体不明の第三者を訴訟の相手方(被告)にするには、それが誰であるのかを特定しなければならず、特定しないまま訴訟を提起することはできません。しかし、建物の占有者が誰かわからない状況下において調査し、その人物を特定することは困難なことです。

 従って、このような場合、貸主としては、まず、建物の占有者を不特定として不動産占有移転禁止の仮処分の申立をし、同仮処分命令の発令を受け、同命令に基づき執行官が当該建物に赴き、その場において、建物を占有している者に対して質問し、文書の提出などさせて建物占有者を特定します(民事保全法25条の2)。

 そして貸主は、A及び特定された占有者を被告として建物明渡訴訟を提起し、その勝訴判決に基づく強制執行により建物の明け渡しを実現することになります。

(弁護士 長島佑享)