JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

農業後継者の寄与分は認められますか

質問

 わたしは、農家の後継者として労賃をもらわず、長年無報酬で農業を手伝ってきました。先日、父が亡くなり相続人はわたしと姉、弟、妹の4人です。母は既に亡くなりました。今後も農業を継続するために、遺産の大部分を占める宅地と農地をわたしの寄与分として取得できるでしょうか。

回答

 相続人の遺産を共同相続人間でどのように分けるかは、話合いにより自由に決めることができます。ですから相続人全員が了解すれば、遺産の大部分を占める宅地や農地をあなたが取得することも可能です。

 しかし、共同相続人間で話合いすることができない場合や、話合いが決裂した場合には、被相続人の財産は原則として法定相続分(この場合は4分の1)に従って各相続人に分割されることになります。

 しかし、そうなると相続人の中に被相続人(この場合は父親)の財産の維持、増加に多大な貢献をした者がいる場合は、その相続人にとっては不公平な結果になってしまいます。そこで民法は、共同相続人間の実質的公平を図るために、そのような貢献をした相続人には「寄与分」として、法定相続分(この場合は4分の1)とは別に遺産を取得することのできる権利を認めました。

 ただ、寄与分を認めてもらうためには、通常の貢献をしただけでは認められず、特別(多大)な貢献(寄与)でなければならないとされています。つまり、特別の寄与とは被相続人との関係で通常期待される貢献の程度を超える貢献でなければならないということです。ですから、一時的に、あるいは時折農業を手伝う程度では寄与分は認められませんし、報酬(労働の対価)をもらっている場合も寄与分は認められません。

 あなたの場合、農家の後継者として長期間にわたり無報酬で家業の農業に従事していたというのですから、相続財産の維持に特別の貢献(寄与)があったものとして、寄与分は認められるでしょう。

 そこで、寄与分としてどれくらいのものが認められるかですが、寄与分については各事案ごとに一切の事情を総合的に考慮して決定されるため、一概に「これぐらい」ということはできません。

 農業用財産を細分化させたくない、というあなたのお考えは理解できます。しかし、姉や弟、妹から遺留分(この場合は各自8分の1)を請求されると、あなたの寄与分を定めるに当り、その遺留分も考慮されることになります。

 そうすると、長期間にわたり無報酬ないしは無報酬同然にて農業に従事し、しかも父の晩年の療養看護をして相続財産の維持に多大な貢献をしたとしても、それだけで相続財産の大部分を占める宅地や農地をあなたの寄与分として認めてもらうことは無理と思われます。

ですから、あなたとしては、姉や弟、妹にある程度の代償金を支払って宅地や農地などの農業用財産を取得する、いわゆる代償分割の方法で問題解決を図るのがよいでしょう。

(弁護士 長島佑享)