JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

財産を後継者に確実に継承させたい。遺留分放棄で問題解決!

質問

 わたしは、農業を継いでくれる 長男に財産の大部分を遺贈し(遺 言で財産を贈与すること)、次男にはある程度のお金をあげて遺留 分を放棄してもらおうと思っています。どのようにすればよいのでしょうか。それから、次男が遺留 分を放棄した後に私より先に亡くなった場合、次男の子どもは遺留分を放棄したことになるのでしょうか。なお、わたしの妻は既に亡くなっています。

回答

 「遺留分」とは、被相続人の遺産のうち、相続人のために残しておかなければならない一定の割合のことです。

 そして、相続人が子どもの場合の遺留分は、被相続人の財産の2分の1です。したがって、次男の遺留分は、あなたが将来亡くなった時に有していた財産の2分の1(遺留分)の2分の1(子どもの人数)ですから、4分の1となります。

 ですから、あなたが長男に次男の遺留分を侵害する遺贈や贈与をした場合、次男は、長男に対して遺留分減殺(げんざい)請求、つまり遺留分の限度で長男から財産を取り戻すことができます。 しかし、民法は、家庭裁判所の許可を得れば、相続開始前つまりあなたの生存中に遺留分を放棄ができることを認めています。(民 法1043条)。

 したがって、次男に遺留分を放棄してもらえば、あなたが遺言で次男の遺留分を侵害する遺贈を長男にしても、次男はあなたの亡き後、長男に対して遺留分減殺請求することはできませんから、農業を継いでくれる長男にあなたの遺 産を確実に承継させることができます。

 次男に遺留分を放棄してもらうためには、次男とよく話し合って、十分納得してもらったうえで、次男が家庭裁判所に「遺留分放棄の許可の申立て」を行います。この申立てがあると、裁判所は、申立てが遺留分権利者つまり次男の自由意思に基づくものであるかどう か、遺留分放棄に合理性や必要性が認められるかどうかなどを考慮 して、許可あるいは不許可(却下)の決定(審判)をしてくれます。

 そして、次男に遺留分放棄をしてもらっておけば、仮に次男があなたより先に亡くなった場合で も、次男の子どもは、自分で遺留分を放棄しなくても、遺留分を放棄していることになります。

 ただ、次男が遺留分を放棄しても、相続の放棄をしたことにはなりませんので注意してください。遺留分の放棄と相続の放棄とは、まったく別のものです。遺留分を放棄した者も、相続が開始すれば相続人となります。ですから、次男が遺留分を放棄しても、あなたが長男に遷言による遺贈または贈与をしないまま死亡した場合に は、次男は法定相続分(遺産の2分の1)にもとづいて遺産相続を 主張することができます。      

 

(弁護士 長島佑享)