JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 相続は他人事と思っていましたが、我が家もそのうちに相続が始まるかもしれない。相続でもめる話をよく聞きますが、我が家には到底考えられないことです。それよりも、相続税を少しでも節税できればと考えております。何か良い手がありますか。

回答

相続税は財産の分け方次第

 相続税は、法定相続人の数や財産の状況によって税の総額が計算され、財産の分け方によって納税額が決まるしくみです。当然、生前に行った節税対策の結果も数字に表れますが、申告期限内に遺産分割して納税することを要件としているだけに、分割協議の結果次第で節税効果が帳消しになることもあります。

相続税のしくみ

 相続税は、富の再配分とか所得税の後払的な考え方をもって遺産を取得する者へ課税することから、基礎控除と累進税率が適用されます。財産税だけに、納税の便宜、生活の立て直し、確かな事業承継、未成年者・障害者・配偶者の生活に配慮しています。平均的な相続財産に対する相続税の割合(実効税率)は20%前後ですから配偶者が50%相続すると、他の相続人の納税額はおよそ遺産の10%程度になります。

相続対策の基本

 したがって、改めて節税対策を講じなくても、親と同居して家業を承継するとか、子や孫たちの教育や結婚独立を支援するなど、ごく当たり前の自助努力だけでも節税になります。相続はいつ発生するかわからないだけに、相続計画を立てて実行することが大切です。まず相続財産と債務を調べて相続税の総額を試算します。債務の返済財源は何か、土地建物等の保有コストを現在の収入で賄えるか、納税資金を期限までに準備できるか、家業や生活に必要な財産を相続するしくみがあるか、誰に何を相続させるのか、他の相続人の遺留分を侵害していないか、などの疑問を解決しておくことが節税対策なのです。

もめごとの原因を作る節税対策

 良かれと思って実行した節税対策でも、家業や生活の改善にならないもの、相続人間に不公平を生ずるもの、特定の相続人の受益になるもの、実効税率以上の負担を伴うもの、目的のない生前贈与、不要な養子縁組、時価と相続税評価のしくみを利用した過度の対策は節税どころか負担増になりかねない。もめごとの原因にもなりますから留意しましょう。

財産価値がなければ

 次の世代へ受け継がれる家産は有用なものでなければならない。それは、生産手段としての財産、生活手段として必要な財産に限るのです。生産手段はコストとして、生活手段は生活費として負担できるものでなければ持ち堪えられない。市街化区域の農地は宅地として、調整区域の農地は耕地として利用することが最も経済的なのです。いずれも財産でなければ承継してくれません。財産というからには収益性があって換金性があり、安定していることです。

目減りを防ぐ財産管理

 家産は収益性が無ければ当然に目減りします。収益性とは保有コストを上回る収益が得られることです。保有コストは固定資産税・都市計画税のほか、次の相続までの相続税の年割額です。換金性とは、いざというときに他の資産と交換したり譲渡換金できる状態にあるもの。保有する土地建物を総点検して財産性の低い物件は収益性を高める利活用対策を施します。生活用の居宅と敷地は小規模(相続税は330m²まで20%の評価、固定資産税は200m²まで6分の1評価をしています)が経済面積です。

相続はなぜもめるのか

 なぜ遺産の相続は難しいのか。それは均分相続だからです。相続人の生活設計に親の財産が組み込まれるほどに関心が高いのです。家と家のつながりを重んじる日本の社会では、「家」を中心にものごとが営まれてきました。跡取りは家産を均分に分けるということを理解できないでいる。個人の尊厳を基本とする民法のもとで開かれる遺産分割の調停では、家を守るという大義が見当たらない。相続人の中には被相続人の財産の形成や療養看護に著しく寄与した人、これから家を承継し祭祀を主宰する人、単に財産のみを相続する人、生前に財産を受益している人がいる。それでも、法定相続分が基準になってしまうのは、相応の評価をするしくみが無いからです。相続人の数が少なく相続人の年齢差が小さいことも影響しているようです。

円満な相続のためには

 家の大切さや必要性を主張しても、頻繁に生前贈与を繰り返したり、殆どの財産を跡取りに相続させる旨の遺言書が発見されると、話合いの席に着かない相続人が現れるものです。分割協議を経て、申告期限内に相続税の申告ができれば円満な相続と云えるでしょう。「我が家に限って相続でもめることはない」と決め込んでいるのは、早合点。一刻も早く各相続人の本音に接しておく必要があります。被相続人は自ら「子ども達に託すこと」を説明し、「相続への思い」を伝えておくべきです。

節税効果をもたらす生前贈与

 生前協議の結果をもとに、各相続人が取得する予定の財産を実効税率の範囲内で生前に贈与しておくと効果があります。教育資金の一括贈与、子どもたちへの住宅取得資金の贈与、結婚子育て資金の贈与、障害者扶養信託などはいずれも金額が大きいだけに、実行しておきたいものです。

遺言書があれば

 適格な遺言書があれば、各相続人の署名押印が無くても不動産の登記や預貯金の名義変更が可能で、相続税の申告書も期限内に提出できます。家業や配偶者の生活を守るためには「斯くあるべき」内容の遺言が必要です。遺留分の侵害額として現金を用意する代わりに譲渡換金予定地を各相続人に持分で割り当てたり、必要な財産を明記することも必要です。