JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 消費税は10月から大きく変わるそうですが、農業や不動産管理事業における消費税はどのように変わりますか。事業者は新しい消費税制にどう対応すべきですか。生活者として消費税の負担を軽減するためにどんな点に留意したらよいでしょうか。

回答

消費税は10月1日から10%に

 消費税は今年の10月1日から10%に引き上げられます。これにともなって軽減税率が導入されることになりました。したがって、消費税額を計算する税率は旧3%、旧5%、旧8%、それに標準税率10%、軽減税率8%の5つの複数税率になります。平成31年3月31日までに契約をすると旧8%(消費税率6・3%、地方消費税1・7%)の税率を適用できる特例がありますが、軽減税率の8%(消費税率6・24%、地方消費税1・76%)と同率ではありません。地方消費税には軽減税率の制度がなく消費税の78分の22を適用した結果なのです。この改正はあらゆる事業者や消費者に影響がありますので、そのしくみに関心を持っていただきたいと思います。

全ての取引を適用税率ごとに区分

 複数税率のもとでは、事業者は日常の取引を税率の異なるごとに区分して経理しないと消費税を正しく申告することができません。これまでも仕入税額控除を適用するためには帳簿と請求書等の保存が要件とされていましたが、令和元年10月1日からは区分経理に対応した帳簿と請求書等に軽減税率対象品目、税率ごとに区分した対価の額の合計額を記載し整理保存しなければなりません。なお、令和5年9月30日までの課税仕入れのうち、支払金額が3万円未満のものについては現行と同様に帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うことができます。

インボイス制度への移行

 費税率が複数になったことから各事業者間の取引を経て消費税の納税額と控除額を正しく計算するために、令和5年10月1日からは適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。適格請求書(請求書や領収書に税率ごとの消費税額と適用税率、事業者の登録番号などを記載)を発行できる事業者は税務署長に登録した課税事業者に限られ、免税事業者は課税事業者を選択しないかぎり適格請求書等を発行することができません。つまり、登録番号のない請求書等は敬遠されることから、免税事業者であっても課税事業者を選択して納税義務者になることが予想されます。なお、免税事業者や消費者、適格請求書発行事業者以外の者から仕入れた場合であっても、令和5年10月1日から令和8年9月30日まで、の仕入については、仕入税額相当額の80%まで、その後令和11年9月30日までは50%相当額を控除できる経過措置が設けられています。

税率の区分が困難な場合の特例

 基準期間の課税売上高が5千万円以下で、(1) 簡易課税制度を選択していない中小事業者で仕入を税率ごとに管理できる卸・小売事業者については、卸小売に係る売上高に卸小売等の軽減仕入割合を乗じた金額を軽減税率対象の売上高として売上税額を計算する方法。(2) 通常の連続する10営業日における課税売上高に、売上に占める軽減売上高の割合を乗じた金額を軽減税率対象品目の売上とする方法。(3) (1)(2)の割合の計算が困難な事業者は(1)(2)の割合を50%として売上税額を計算する方法があります。いずれも令和元年10月1日から令和5年9月30日までの期間について適用されます。

軽減税率の対象になるもの

 軽減税率(8%)の対象品目は、酒類を除く飲食料品(外食を含まない)等の譲渡及び定期購読契約によって週2回以上発行し配達される新聞、それに輸入食料品です。軽減対象資産の譲渡に対しては、軽減税率としての消費税が課税されます。飲食料品を販売する際の容器や包装材料(例えば鮮魚等のトレイや包装紙など)は、その販売に付帯する通常必要なものとして飲食料品とされます。

飲食料品と一体資産と一括資産

 食品と食品以外の資産をあらかじめ一体にしたもの(おもちゃ付の菓子など)については、その価額が10,800円以下でしかも食品の占める金額の割合が三分の二以上であれば、その全体を飲食料品として差し支えないとしています。お客様がお店で品物を選んでセット(一括資産)にしたものについては、食品と食品以外の商品に区分して8%と10%の税率をそれぞれ適用することになりますから留意して下さい。

外食とは

 飲食店業等を営む者がテーブル、椅子、カウンターその他飲食に用いられる設備のある場所(レストラン、食堂、料理店など)において飲食料品を飲食させ役務を提供するのは、軽減税率の対象外(10%の標準税率)とされます。ただし、お客様が食事の注文をする際に持ち帰りの意思表示をして料理を持ち帰った場合は、軽減税率が適用されます。

軽減税率が適用される身近な商品等の事例

 人の飲用または食用に供されるもの、特定保健用食品、医薬品等に該当しない栄養ドリンク、有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供、宅配の食品、みりん風調味料、酒類を原料とした菓子、日本酒を醸造するための米、税抜売価10,000円のビールとジュースの詰め合わせ(ジュースが2/3以上)、産地名の入った桐箱入りのメロン、お土産用に注文した寿司の持ち帰り、列車の車内販売サービスの弁当販売、学校給食、ミネラルウォーター、果物狩りで収穫した果物を別途価額で販売、ピザの宅配など。(つづく)