JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 夫婦で米と野菜を3.6ha耕してきましたが、1月に夫が急逝したので私が全財産を相続しました。とくに土地建物は先祖から引き継がれてきたものだけに、家産として守っていきたいと思っていますが、私一人では農作業を続けることはできません。そこで、調整区域内の農地は将来子どもが就農するまでの間、専業農家に借りていただき生産緑地は市長に買い取りを申し出て宅地として貸すことにしました。これからの土地活用で留意すべきこと、土地を他人に賃貸する場合に想定される権利義務や地代の決め方、耕作権、賃借権、借地権の税務において留意すべき点はどんなことでしょうか。

回答

土地を財産として活用するには

 土地神話が崩れて30年経ち、地代や家賃は公共料金つまり「原価」であり「生活費」であること、土地に収益性と換金性、安定性が無ければ財産ではないことも分ってきました。この間、土地税制は取得・保有・譲渡の各段階で一貫して強化されてきたことから投資や投機の魅力を削がれ、土地は財産ではなく仕事や生活の手段にかわってきました。ちなみに、今の相続の世代間隔はおよそ27年(父が94才で、子が67才とする)、相続税の実効税率が20%であれば、現行の固定資産税・都市計画税のもとでは何も利用しないと、次の相続までにその土地は35%まで目減りする勘定になります。不動産は他人の物を借りる方が経済的だと云われる由縁です。

土地を活用するということ

 同じ路線価でも形状や環境、用途が違うように全く同じ土地はありません。それぞれ土地には地の利があり、個性があるから機能性や使い勝手などの利用価値は千差万別。土地を貸すときは、住環境づくりをしつつ最も相応しい用途を見つけ、土地で貸すのか土地と建物で貸すのかを判断して最適な借り手をさがすことが大切です。

真に借りたい人に借りていただく

 地主は、投資家に所有地を一定の賃料(保有コスト+利益)で貸す。投資家は、採算と利回りを試算して他人の土地上に建物を取得して運用する。テナントはその土地建物の機能を必要な期間だけ借りて商売をするといった取柄交換型が必要かもしれません。地主は建物への投資は不要で、管理費、解体費用などの支出が無いので安定収入が見込めるというものです。これからは、「この土地で商売をしたい」、「この土地に住みたい」という真の借り手に出会うことを心がけ、建ててから借り手を探す成り行き経営は避けたいものです。有利な運用が望めない場合は土地を譲渡するか優良物件へ買換えするのも選択肢のひとつです。

土地の貸借と権利義務

 土地を他人に貸すということは、利用目的が何であるかを問わず、その土地の所有権の一部が使用収益権として借り手に移るのです。契約は使用貸借か賃貸借か、建物の所有を目的とした普通借地権か定期借地権か、資材置き場か駐車場としての賃借権かによって借り手に移る使用収益権の度合いが決まります。我が家の土地の保有コストを計算してから受け取るべき権利金等の額、地代の料率、これらを補う敷金や保証金の額を算定して交渉に臨みます。なお、無償で土地を貸借する使用貸借の場合は、借り手は地代を支払わない代わりに、固定資産税等その土地の維持費用を負担しますが、この権利を相続することはできません。

農地を貸す場合の留意点

 農地に耕作権を設定したり農地を譲渡・贈与する場合は農地法にもとづく農業委員会の許可が必要です。農地を小作に出したい場合は、まず自ら借り手をさがして農地法3条による賃借権を設定するか、農地の集積事業としての利用権を設定します。借り手を特定できない農振農用地は、農地中間管理機構へ貸付希望の申出書を提出して、借り手をさがしてもらうことになります。農地法3条による賃借権を設定した場合、その農地の相続税の評価額は、通常の価額の70%(調整区域内の農地は50%)になります。つまり法定更新など借り手にも相応の権利が移ることから合意解約が義務付けられているわけです。なお、利用権を設定した農地の相続税評価額は、法定更新の適用が無いことからその農地の価額の95%相当額になりますが、借り手はこの賃借権の5%を相続財産に算入する必要はありません。

農地中間管理機構による貸付

 農地中間管理機構による貸付は、借り手の希望が無ければ契約が成立しないだけに、借り手が現れるまでは自ら管理しなければなりません。この制度のもとでは、農地の固定資産税は所有者の負担、農業共済掛金や水利組合等の負担金は借り手の負担になります。貸し手に相続が発生した場合の農地の価額は、農地集積事業の利用権と同様です。なお、固定資産税の減免措置として、農地中間管理機構に15年以上の期間貸し付けた場合には5年間、10年以上15年未満の期間貸し付けた場合は3年間、それぞれ固定資産税が1/2に軽減されます。

土地の貸付と権利金等の授受

 生産緑地を宅地に転用すると固定資産税は一気に宅地並み課税になりますが、宅地にするまで畑として利用しているうちは、負担軽減措置により5年目(1年目0.2、2年目0.4、3年目0.6、4年目0.8、5年目1.0)に宅地としての課税価格になりますから留意して下さい。

 建物若しくは構築物の所有を目的とする土地の賃貸借契約を結ぶときは、借地権相当の権利金か相当の地代(土地の価額の6%)を授受しなければなりません。ただし、法人との土地の賃貸借契約において、「契約が終了したときは土地を無償で返還する旨」の届出を税務署長へ提出しておくと、税務署長は授受された権利金等や地代の額に不足があっても認定課税をしないことになっています。これは、税務上の取扱であって法人にとってみると借地権ですから、これが一人歩きすることがありますので留意する必要があります。なお、定期借地権を設定した場合は法定更新がないので、安心して運用することができます。さて、土地の賃貸借契約において、土地の価額の10分の5を超える権利金等の授受があったときは、貸し手は土地を譲渡したものとみなされて譲渡税が課税されますから留意して下さい。

 3年以上の期間他人に土地を使用させることによって一時に受け取る権利金等の額(土地の価額の10分の5以下の場合)が、土地の使用料の年額の2倍以上であるときは、臨時所得として平均課税(五分五乗方式)による税額計算の特例を受けることができます。