質問
私の父はA社に駐車場用地を一括して賃貸していました。さきごろA社から駐車台数が減ってきたので地代を半分にしてもらいたいと申し出がありました。A社に理由を聞くと、「工場の機械が古いので仕事が減ってきた。最新の設備にするには資金の借入れが必要だが保証人と担保がない。駐車場を担保に貸してもらえれば仕事が増え駐車場もいっぱいになるはず。」と懇願され、父はA社の借入れのために駐車場の土地を担保にして保証人になりました。半年も経たないうちにA社は倒産してしまいました。
父は保証人の立場から借入れをしてA社の代わりに債務を弁済しました。
間もなく父は体調を崩して死亡しました。相続人である私は父の借入金を返済するために土地を譲渡しました。保証した債務を履行(弁済)するために土地を売った場合でも譲渡税がかかるのでしょうか。
回答
譲渡税が軽減される特例
他人の債務を保証し、保証人の立場上債務者に代わって債務を弁済するために土地を譲渡した場合、その弁済に伴う債務者への求償権の全部又は一部を行使することができないことになったときは、その行使することができないこととなった金額に対応する部分の金額は、譲渡所得の金額の計算上その譲渡はなかったものとみなされます。これは、他人の借金の保証人になったが運悪く肩代わりさせられてしまった人の救済制度としての特例なのです。
軽減されない場合
したがって、保証債務を履行するために手元の預貯金や有価証券などによってすでに債務を返済しているような場合は、保証債務を履行するための土地等の譲渡に該当せず、この特例の適用はありませんので留意してください。
なお、父はA社から保証料等の利益を受けていないこと、返済能力が無いことを知りながら保証人になり譲渡代金をその弁済にあてた場合にはこの特例の適用を受けることができません。したがって、父が債務を保証する時にA社はすでに破産状態にあったのではないか、社長自身が他に流用する目的だったのか、今もA社、社長ともに無産状態であるかなど所得税の申告書を提出する前にもう一度よく調べておく必要があります。
相続があっても適用される場合
他人の債務の返済を保証するために土地を担保に差し出したり、連帯保証人としての立場を相続し、その弁済に充てるために譲渡した場合にもこの特例の適用を受けることができます。父が借入金で弁済を肩代わりしたあと死亡し、相続人が父の借入金を返済するために弁済後おおむね一年以内に土地を譲渡した場合にも適用があります。なお、保証債務の履行に伴う求償権の行使不能額(請求しても返済を受けられない金額)は父の相続財産から債務として控除することができます。
相続税額の加算で譲渡税が軽減される
父の相続が始まってから3年10ケ月以内に相続財産を譲渡した場合は、あなたの課税財産のうちに譲渡した土地の価額(保証債務の履行に伴う求償権の行使不能額の特例の適用を受けた部分を除く)の占める割合を相続税額に乗じた金額を取得費加算として譲渡所得の金額の計算上控除することができます。
申告書への書類添付
この特例の適用を受けようとするときは、確定申告書、修正申告書、更正の請求書にこの特例の適用を受ける旨の記載があり、かつ譲渡した資産の種類その他一定の事項を記載した書類の添付がある場合に限り適用することができます。