JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 平成27年分の申告所得税の確定申告をひかえ、一年分の農業所得の記帳と決算の準備を始めました。TPPをひかえ、もっと効率的な経営をしなければと考えつつも申告のための青色決算書を作るのが精いっぱいで何の対策も打てません。これからどんな視点で農業経営を進めていったらよいのでしょうか。

回答

経営は利益の計算が原点

 およそ農業は「業」そのものですから利益が出なければ生活も成り立ちません。「入りを計って出るを制する」考え方のもとに、収入を見込むも費用をかけ過ぎないことが大切です。減価償却費を計上する前に事業が赤字になったとすれば、投下した資本は回収されず、利益がなければ借入金は返済できないことになります。

利益はいくらあったらよいか

 儲けが少なく資金の蓄えが無いと、借入金は安直な「事業主貸勘定」から資金を引き出して返すことになります。つまり元入金が小さくなり売上金が借入金の返済にまわるという悪循環が始まるのです。少なくとも減価償却費を賄い、借入金の返済額、来年の種代、そして生活費を上まわる利益が必要なのです。

生業としての経営規模は

 そこで、我が家は農業でいくら稼がなければならないかという利益を押さえて、販売計画を立て生産の準備をすることになります。販売高は単価×数量ですから、単価が上がらなければ数量を上げる、数量が上がらなければ単価を上げる式で経営規模を考えます。やがて法人化して生産コスト引き下げを実現することも考えられます。

決算は正しい所得の計算手続

 農家の経営の成果は事業主の手取額の計算ですから、記帳をもとに必ず決算をして正しい所得計算をしなければなりません。一年間の収入と支出の勘定を集計したうえで売上高の見落とし、今年に収入すべき収益、農産物の棚卸高を追加計上するほか、減価償却費をはじめ今年の費用になるもの、来年以後へ繰り延べるものを加減するなどの決算をして正しい事業の成果を計算します。

普段の記帳で経営改善を

 この数字をもとにして計画との比較、損益分岐点や利益率などの経営分析をすると、どこが良くてどこが悪いのか、それをどう改善すべきかの経営判断が見えてきます。市況の低迷や不作でない限り農業所得が赤字になることはありませんが、過大投資、過剰人員、冗費、費用のかけ過ぎなどによって経営は破綻することがあります。つまり、記帳をおろそかにすると現状認識が薄くなり、意思決定も曖昧で無駄な支出にも疑問が沸かなくなってしまうのです。

青色決算書は申告所得の計算

 これからは、決算数値は経営のために、青色決算書は申告所得の計算のためにと使い分けが必要です。経営実態を把握したところで農業の申告所得を計算します。有利な減価償却費方法の採用、割増・特別償却と税額控除の判断、家事関連費用の必要経費算入、貸倒引当金の繰入れ、農業経営基盤強化準備金の繰入れ、国庫補助金等の総収入金額不算入、青色申告特別控除など、今や経営を支援するための節税策は盛りだくさん。正しい決算資料をもとにすると、所得税だけでなく消費税にも有利不利の選択肢が広がることになります。

TPPでは何が求められているか

 TPPが発効すると商売に国境がなくなり、自由に往き来する農産物が街にあふれるかもしれません。消費者は選り取り見どり、国内の生産者はより高い商品価値が求められることになります。良いものを安く売るための経営が必然で、人もの金のすべての面で優位に立たなければなりません。そこで、仕事と生活が隣り合わせの個人経営では、損得はもちろん資金の収支も赤字にしないこと、減価償却費相当の資金が事業主貸として他に流用しないように目的貯金として別口座で管理しておくくらいの周到さが必要です。