質問
子どもたちの教育は両親の援助を受けながら家計で何とかまかなってきました。孫たちのこれからの教育資金がどうなるか心配です。今年の税制改正で教育資金を一括して贈与することができると聞きましたが、孫やひ孫にまであげることができますか。
塾や予備校の費用も該当しますか。親の相続にどんな影響がありますか。
回答
将来の不安のひとつが解消
将来の『子どもの教育』、『家族の健康』、『収入と家計』に90%以上の国民が何らかの不安を持っていることがわかっています。高齢者から悩める若者へ財産を移して経済を活性化しようと、教育資金の一括贈与(非課税)の特例が創設され、納税者から注目を集めています。
もともと教育費の贈与は非課税
扶養義務者である父母や祖父母から子や孫へ教育費として必要なつど直接これらにあてるために支払われるものは、その目的からして贈与税は非課税とされています。現行と違うところは将来に支出する教育費用を今一括して非課税で贈与できることです。
『親はなくても子は育つ』のごとく、子どもの将来の教育の機会が保証されたようなものです。
教育資金の一括贈与のしくみ
平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に、父母又は祖父母などが、30才未満の子や孫・ひ孫の教育資金にあてるために、金融機関に金銭等を一括信託等をした場合には、受贈者一人当たり1500万円まで贈与税を非課税とし受贈者が30才になった時に遣い残した金銭と学校等以外に支出した金額のうち500万円を超える部分について贈与税を課税するというものです。なお、平成27年以後の子や孫への贈与については低い税率が適用されることになっています。
非課税の贈与で相続財産減らし
教育資金の一括贈与の特例を受けようとするときは、(1)贈与者が信託銀行と「教育資金管理契約」を設定して金銭を信託し、子や孫はそこから必要な資金を払い出す法。(2)贈与を受けた子や孫が銀行や農協へ預金し「教育資金管理契約」を結んで必要な資金を払い出す法。(3)子や孫が証券会社と「教育資金管理契約」を結んで有価証券を購入し必要な資金を払い出す法のいずれかを選び、「教育資金非課税申告書」を金融機関を経由して税務署長に提出することになります。非課税の限度額は1500万円(一口以内の口座に限ります)ですから教育目標や資金計画に合わせて贈与額を決め、何回かに分けて預け入れることができます。この一括贈与は非課税ですから相続開始前3年以内に贈与されたものであっても、相続時精算課税制度を受けている場合でも贈与者の相続財産に加算する必要はありません。つまり、贈与した時に贈与した資金の額だけ相続財産を減らすことができるということですが、受贈者が30歳になってから三年以内に贈与者の相続が発生し遣い残しがある場合は、三年以内の贈与加算が適用され相続時精算課税の贈与があったとみなされますので留意してください。
教育資金を目的外に引き出すと
必要な資金は受贈者が立て替えて払った後で領収書と引き換えに銀行等から引き出す方法と、支払の前後を問わず任意に引き出す方法のいずれかを選択できますが、あとでこれを変更することはできません。任意に引き出す方法を選ぶと目的外に払戻すことも可能ですが、あとで贈与税がかかりますから留意してください。
贈与税の申告手続き
教育資金の管理契約は、信託財産や預貯金・有価証券の残高が「0円」になったとき、受贈者が30才になったとき、受贈者が死亡したときのいずれか早い日に終了することになっています。したがって、実質的な遣い残しがある場合は教育資金の管理契約が終了した年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出して納税する必要があります。
例えば、1500万円受贈した子が学校関係で800万円、学校以外に600万円支出した場合、学校関係の遣い残し分100万円と学校以外の支出超過分100万円を合わせて200万円が贈与税の課税対象とされ、納める贈与税は9万円になります。なお、受贈者が死亡したときは遣い残した金銭について贈与税の申告をしなくて良いことになっています。
教育費とは
この特例の対象となる教育費とは、認定こども園・保育所・幼稚園、小・中・高等学校、大学、大学院、専修学校、一定の外国の教育施設などへの入園料、保育料、施設整備費、入学検定料、入学金・授業料・学用品の購入費・修学旅行費・学校給食費その他学校等における教育に伴って支出する必要な費用をいいます。
教育費以外のものとは
学校等以外に直接支払われるものには予備校・学習塾・家庭教師・そろばん・英会話教室など、野球・サッカー・水泳教室、華道・茶道・ピアノ・絵画などの講座の月謝や利用料、これらに関連する物品を指導者を通じて購入する費用などがありますがその限度額は500万円までとされ、これを超えた部分は遣い残しと同じように贈与税の対象になりますから留意してください。