JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 昨年(平成24年)6月10日に青色申告者であった夫が不慮の事故で亡くなりました。9月10日までに3人の子ども達との分割協議が整い、引渡しの済んでいない土地の売買契約と農業を長男が承継し、貸家とその他の財産は私が取得しました。平成24年分の夫の所得については9月30日までに相続人全員で準確定申告を済ませたところです。なお、私が夫に掛けた死亡共済金については死因の判定に時間を要するとしてまだ支払われておりません。所得税の確定申告において何か留意すべきことがありますか。

回答

相続人の確定申告

 相続とは被相続人の仕事と生活を「相い続ける」ことですから、亡くなられた人の準確定申告をはじめ消費税の納税義務者、譲渡した土地の引渡しと代金受領、相続した遺産から生ずる所得の帰属、扶養関係の異動や医療費の支出による所得控除の見直しなど、相続人の確定申告に反映すべきものがありますから留意してください。

相続開始年の所得は二分する

 平成24年分の農業所得や不動産所得のうち1月1日から6月10日までは被相続人(夫)の所得ですから相続開始の日の翌日から4カ月以内に相続人全員で準確定申告書を提出しなければなりません。6月11日から12月31日までの部分は分割取得した相続人の所得になりますが、分割協議が整う9月9日までの所得は各相続人が法定相続分で収益したことになりますから留意してください。

配偶者控除と扶養控除を受ける

 夫が死亡した時の現況によりあなたが夫の控除対象配偶者に該当し、その年の12月31日の現況では息子さんの扶養親族に該当する場合には、夫の準確定申告において配偶者控除を受けたうえ息子さんの扶養控除の対象にもなります。 また、あなたが息子さんの扶養親族に該当せず24年分のあなたの所得が五百万円以下であるなど寡婦に該当する場合は寡婦控除を受けることができます。なお、夫の死亡時にあなたが夫の青色事業専従者であった場合にはご主人の控除対象配偶者には該当しませんので留意して下さい。

土地の売買契約を承継したときの申告

 被相続人が土地を売り渡す契約を結んだ後に死亡し、相続人が代金を受領し土地の引渡しを行った場合、これを誰の所得とするかは納税者の選択によります。

 売買の契約を結んだ日の所得とする場合は、被相続人が土地を譲渡したものとして相続開始の日の翌日から4カ月以内に準確定申告をして納税することになります。納付した所得税額は被相続人の債務として相続財産から控除することができます。土地を引き渡した日に譲渡があったものとする場合は相続人が土地を譲渡したことになりますから、相続税額のうち土地に対応する部分を取得費加算として必要経費に算入することができます。

 なお、相続によって取得した土地を相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合も取得費加算の適用を受けて譲渡税を軽減することができます。

必要経費になる相続登記費用等

 相続によって取得した農地や賃貸用の土地建物に対する固定資産税や都市計画税については、夫の死亡前に納税通知書が届いていますので、準確定申告においてその一部(納期到来分または実際の納付額)又は全額を必要経費として算入することができます。

 また、相続により取得した事業用の土地や建物の登記費用は農業所得や不動産所得の計算上必要経費に計上できますので見落とさないよう留意してください。

相続人の消費税の納税義務の特例

 免税事業者(基準期間である平成22年における課税売上高が一千万円以下となる事業者のことをいいます)である相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合において平成24年が課税事業者になるかどうかは、基準期間における被相続人の課税売上高が一千万円を超えるかどうかにより判定します。さらに平成25年または平成26年が課税事業者になるかどうかは、平成22年または平成23年における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高との合計額で一千万円を超えるかどうかで判定します。

 したがって、相続人が免税事業者であっても相続により課税事業者になった相続人は、相続があった日の翌日(平成24年6月11日)から平成24年12月31日までの期間における課税資産の譲渡については納税義務がありますから留意してください。

純損失の繰越控除

 青色申告者はその年において純損失が生じた場合には、これを翌年以後3年分に繰り越して各年の所得から控除することになっていますが、納税者が死亡したときは準確定申告において平成24年分の所得から控除し、控除しきれない純損失の金額はその年の前年(平成23年分)又は前々年(平成22年分)に繰戻して還付を受けることができます。

 前々年に繰戻しても還付しきれない残額は切り捨てられますから留意してください。

被相続人の医療費

 被相続人が平成24年中に支払った医療費は準確定申告において被相続人の医療費控除の対象になりますが、生計を一にする長男がそのつど支払った被相続人の医療費を長男の医療費控除とすることができます。被相続人の死亡後に長男が支払った医療費はたとえ相続財産から支払われたとしても、長男の医療費控除として申告することになりますから留意してください。

固定資産の取得時期と耐用年数

 相続によって取得した減価償却資産の取得価額は、その減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなした場合の取得価額及び耐用年数を適用します。

死亡共済金はいつの所得とするか

 共済掛金を負担したあなたが受け取る死亡共済金は一時所得とされ、その支払を受けるべき事実が生じた日の所得として取り扱われております。しかしながら、死因が特定できるまでは共済金額が決まらないなど、平成24年中に収入を認識することができないことから実際に支払われる金額が確定する平成25年分の所得として差し支えないと考えます。

青色申告承認申請と専従者給与の届出

 息子さんが青色申告者であるお父様の農業を承継して事業を開始する場合は、準確定申告書の提出期限である平成24年10月10日(4カ月以内)までに青色申告承認申請書を税務署長に提出することになっています。同時に専従者に関する事項を記載した専従者給与に関する届出書、源泉所得税の納期の特例に関する届出書もいっしょに提出しておきましょう。