質問
風評被害等に対する補償金の課税関係について
回答
原子力発電所事故に伴い東京電力から被害者に支払われる損害賠償金については、補償の対象に応じ、次の表のとおり課税されるものと非課税とされるものに分けて申告の要否を判断することになります。逸失利益などとして支払われる賠償金については当事者間の合意や和解によって補償内容が確定した日の年分の農業所得等の収入金額になりますので、仮払金として支払われた部分につては内容が明らかにされるまで収入として計上しなくても差し支えありません。
賠償の対象 |
賠償の理由または根拠 |
課税関係 |
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逸失利益(1?2)に対するもの 1.この事故がなければ得られたであろう利益?実際に得られた利益との差額 2.この事故がなければ負担していたであろう費用?実際に負担した費用との差額 風評被害に対するもの 汚染の危険性を懸念した買い控え、取引停止等によって生じた被害 |
野菜、米、稲わらなどについて暫定規制値を超える放射能が検出されたために作付制限や出荷制限を受け減収となったこと |
農業所得の収入金額になります補償内容が確定した日の年分の雑収入又は補償金収入として計上します |
出荷制限により収穫できず廃棄を余儀なくされた未収穫の農産物や棚卸農産物が廃棄されたこと |
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出荷制限を受けた地区に近いという理由で販売量が減少したこと、風評被害による買い控えの動きから販売価額が下落し減収となったこと |
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従事できないことによる給料等の減収分 |
出荷制限や避難指示によって就労不可能となり給料が減収したこと |
一時所得の収入金額 |
被害を受けたことによって発生した追加的費用及び必要経費を補てんするもの |
農産物の放射能検査費用、家畜の移動・飼育費用・継続して飼育するための追加費用、牧草の廃棄、代替の飼料の購入費用、農地の洗浄・土の入替費用・除去処分費用、勤務場所の変更・転職などに要した実費 |
農業所得の収入金額になります補償内容が確定した日の年分の雑収入又は補償金収入となります |
心身の損害または資産の損害に対するもの |
避難生活等による精神的損害 生命・身体的損害、避難・帰宅費用一時立ち入り費用、人・家事用資産の検査費用、心身の損害、資産の損害に対して支払を受ける損害賠償金 |
非課税ですから所得として申告する必要はありません |
※賠償金を受け取ることによって農業収入が増えますが、通常の生産原価のほか農産物の廃棄損失、追加的な費用、賠償請求費用などの必要経費が新たに発生することから農業所得の金額が大きくなることはありません。
なお、消費税は不課税ですから課税売上高に加算する必要はありません。
(西田税理士)