区画整理事業中に相続が発生した場合の税金
私は某土地区画整理事業区域内に農地を三反ほど所有しています。このほど、この土地について仮換地指定の通知を受けました。近い将来相続が発生した場合、この土地はどのように評価するのでしょうか。また、相続税を納税するために譲渡または物納することができますか。
回答
区画整理の流れ
画整理事業が始まると、換地計画にもとづいて道路や公園をつくるために長期間を要することから、従前の土地について「○○街区 ○○画地」などと仮換地が指定されます。仮換地の指定があると従前地の使用収益権は停止されますが、新しい公共施設が完成すると建物の建築も許可され、新しい街づくりが始まるわけです。やがて事業が完了すると精算が行われ、仮換地は本換地として新しい地番が付され従前地の権利が移ることになります。
仮換地の相続
この間に相続が発生した場合には、その時点における従前地と仮換地の関係、工事の進み具合、仮換地の利用状況、清算金の徴収または交付の有無などをもとにして評価した仮換地(土地)の価額と権利義務が相続人に引き継がれます。
従前地と仮換地どちらで評価するの
相続財産としての農地について、道路や公園などの公共施設の造成工事が完成し使用収益が開始されている場合は仮換地で評価しますが、仮換地の指定がされていないとき、仮換地が工事中で使用収益できないときは従前地で評価することになります。ところで、工事の進捗状況によっては従前地が原形をとどめず、従前地で評価することができない場合は、仮換地で評価せざるを得ないことになります。
工事中で使用収益できない仮換地は、仮換地で評価するのか、一平方メートル当りの単価をいくらにするのかなどは税務署長が個々の土地毎に指定することになっています。実務的には、個別評価に関する申請をして回答を仰ぐことになっています。
従前地と仮換地評価の有利不利
土地は宅地・雑種地・生産緑地の地目や利用単位毎に評価することになっています。従前地と仮換地のどちらで評価するかによって評価額が大きく変わることになります。つまり、仮換地は減歩があるものの原則として住宅地を前提に標準的な区画割になることから、従前地のように不整形地や広大地などとして減歩割合を越えるような評価減になることはありません。むしろ、路線価が高くなり評価額が上がることがあるからです。
区画整理地の評価額
なお、評価の時点(相続開始日)において工事が完成するまでの期間が一年を超えると見込まれる場合は、造成工事が完了したものとして評価した価額の95%に相当する価額によって評価することができます。
さらに、本換地の際に徴収または交付されることとなる精算金のうち相続開始時において確実と見込まれる金額は仮換地の評価額から減算または加算して評価します。
仮換地の物納は可能か
相続税は申告期限までに金銭で一括納付するのが原則ですが、金銭で一括納付することができない場合は、納付できない金額の範囲内で延納(最長20年の年賦納付)を申請することができます。延納によっても完納できないと見込まれる場合に限って、納付困難な金額の範囲内で物納することができるのです。
ところで、仮換地は従前地との権利関係が複雑であり使用収益できない段階では原則として物納に適さない劣後財産とされています。しかしながら、他に適当な財産がない場合に限って区画整理地の物納申請が許可されることになっています。
物納か譲渡かの判断基準
物納による収納価額のうち相続税の納税額に相当する部分については譲渡税が非課税とされており、原則として相続税を上まわる超過物納はできないことになっています。
相続によって取得した財産のほとんどが土地である相続人が、仮換地を譲渡した場合は、相続税額のうち土地に対応する部分については所得税はかからないことになります。
物納申請は手続きが厳格で収納までの間に利子税がかかることがありますから、相続税相当額の譲渡をする場合は、売買金額が相続税相当額と譲渡費用を上まわっていれば譲渡換金して納税した方が得策かもしれません。
いくらで収納されるか
なお、物納申請した場合に税務署長がこれを許可し収納するときは、95%で評価した当該仮換地の価額を100%で評価して収納し、従前地で評価して申告した土地は、仮換地の価額に改訂され、収納することになります。
(税理士 西田 芳秋)