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税務相談

平成21年分の農業所得等の計算と申告について

 私は平成21年3月に定年退職したので、父から農地の生前一括贈与を受けて農業経営者になりました。21年5月までに開業届と青色申告承認申請書を提出し、妻を専従者としています。農業所得の計算のしくみ、所得税と消費税の関係がよくわかりません。農業所得のほか、家賃収入、給与所得と退職所得がありますが、どのように申告するのでしょうか。

回答

記帳の原点は利益の計算

 農業は「業」ですから利益がなければ生成発展することができません。「入りを計って出るを制する」考え方が必要で、節税しようとして費用をかけ過ぎないことが大切です。減価償却費を計上する前に所得が「0」になったとすれば、投資額を回収できないことになり、借入金の返済も滞ってしまうのです。そこで、正しい利益を把握するためにも、庭先での販売高や自家消費をもれなく計上するなど収穫や販売規模を把握する一方、生産物や資材などのたな卸を行い、冗費を減らすことです。

所得の計算方法

 農業所得の金額は、その年の販売金額などから必要経費と青色申告特別控除額を控除して算出します。農産物は収穫した時に収穫したときの価格(庭先販売価額)をその年の収入金額に計上しますが、野菜や花、果物などは販売した金額を出荷した年の収入金額とすることができます。収穫基準にもとづく販売高は、(21年分の販売高)?(年初たな卸高)+(年末たな卸高)の算式によって計算します。これらの収入金額を得るために要した生産費や販売費その他の費用は、その発生した年分の必要経費とし、減価償却費は使用期間に応じて必ず計上します。

集落営農の分配金

 任意組合としての集落営農組織へ参加したことによって分配を受けた金額は、農業所得の雑収入として計上します。利益を分配しないで組合内に積立てた場合も同様です。積立てた資金をもとに農機具などを購入したときは、各組合員が一定の持分によって機械を購入したものとされます。

所得計算と消費税の関係

 消費税の申告書は所得税の決算書をもとにして作成することになりますが、課税売上高や課税仕入高を計算するうえで似て非なるものがあります。生産物を市場や直売所などへ出荷(委託販売)した場合、所得税では販売額を収入とし運賃手数料を費用とするのに対して、消費税では販売金額から運賃手数料を差引いた残額(手取額)をもって課税売上高とすることができます。平成21年における委託販売を手取額で計算した課税売上高が一千万円以下の場合は、平成23年は免税事業者になります。

また、課税売上高が五千万円を超える場合は、平成23年の消費税は簡易課税を選択できないので本則課税になります。委託販売による課税売上高は手取額で課税仕入高は委託販売の運賃手数料を除いて計算します。

減価償却の留意点

平成19年から減価償却の計算方法が変わりました。そのうち定額法による償却費は次のように計算することになります。

  1. 平成19年3月31日までに購入等して同日までに事業の用に供した資産は、従来どおりの償却方法によって計算しますが、償却限度額(取得価額の95%)まで償却した資産については、その翌年から備忘価額1円を残して5年間で均等償却します。
  2. 平成19年4月1日以後に取得し事業の用に供した資産については90%を乗じないで直接償却率を適用して計算します。
  3. 平成21年から農機具等の法定耐用年数が改正されました。平成21年分の減価償却費は前記の算式のうち償却率のみ新しい償却率に変えて計算することになります。なお、所得税の法定償却法は届出をしなければ定額法になります。

給与所得や退職所得の確定申告

 確定申告にあたっては、農業所得、賃貸収入に係る不動産所得、年金の雑所得、退職時に年末調整された給与所得を総合課税し、算出税額から源泉徴収税額を控除します。不動産所得、農業所得が赤字になり、他の所得から引ききれない金額は退職所得から控除することができます。

 所得税の申告書は2月16日から3月15日までに提出し、納税(振替納税は4月22日)することになっています。なお、電子申告によって申告すると、所得税の額から5千円を控除することができます。

(税理士 西田 芳秋)