JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

相続税や相続費用は所得税の必要経費になりますか?

 父は今年の八月七日に急逝しました。遺産分割協議によって母は居宅と貸家を、長男の私は農地と駐車場を取得しました。預貯金と株式は公正証書遷言によって母がそのすべてを相続することになりました。父の所得税については、四ケ月以内に準確定申告書を提出したいと考えています。遺産分割の日から年末までの所得は財産を取得した人の所得になると思いますが、八月七日から遺産分割の日までの所得は誰の所得になりますか。また、父に課税された固定資産税は誰が負担すべきなのでしょうか。遺言書の執行費用や相続登記費用、遺産の管理費用、固定資産税、相続税は、農業所得や不動産所得の計算上必要経費になりますか。

回答

相続があった年の父の所得の計算

 お父様の生存中(今年の一月一日から八月七日まで)の農業所得不動産所得は、老齢年金等とともに、お父様の二十一年分の所得になります。これらの所得によって所得税の申告義務がある場合は、相続が始まった日の翌日から四ケ月以内 (今年の十二月七日まで) に相続人全員が連署(付表に署名押印) した準確定申告書をお父様の住所地の税務署長に提出しなければなりません。遺産から生ずる所得のうち八月八日から遺産分割の日までのものは各相続人が法定相続割合によって収入することになります。なお、申告義務がない場合でも、還付を受けるための申告書及び損失申告書を提出することができます。

賦課された固定資産税の取扱い

 お父様の土地建物に対する今年度の固定資産税は、相続税額を計算するうえで債務として相続財産 度の固定資産税は、相続税額を計 算するうえで債務として相続財産 から控除することができます。固 定資産税の納税通知書がお父様の 死亡前に届いている場合は、お父様の農業所得や不動産所得の計算上その全額か納期の到来した部分、または実際に納付した金額のいずれかを必要経費に算入することができます。お父様の死亡後に納税通知書が届いた場合は、相続人の所得の計算上必要経費に算入することになります。

相続費用の取扱い

 遺産相続における係争費用や弁護士費用、遺言書の執行費用(登記や預貯金の名義書換手続など)などは相続財産から支弁される家事費ですから、各種所得の金額の計算上必要経費にならず、相続債 務として相続財産から控除することもできません。

譲渡所得の必要経費になる場合

 お母様やあなたが、相続または 遺贈によって取得した財産を八月 七日から相続税の申告期限である平成二十二年六月七日の翌日以降三年以内に譲渡した場合には、申告した相続税額のうち土地に係る部分の金額を取得費加算額として譲渡所得の必要経費に算入することができます。あなたが取得した財産は土地のみですから、土地の譲渡に対してあなたが納付すべき相続税額の全額を必要経費に加算することができます。つまり、加算される相続税額に対応する譲渡税額が軽減されることになるわけです。なお、あなたが他の相続人に判子代などとして代償金を支払っている場合や、物納した土地がある場合には全額控除することはできません。

必要経費に算入できる登記費用

 平成十六年十二月三十一日までに相続や遺贈によって財産を取得した場合は、たとえ事業用資産であっても登記費用については家事上の経費とされ農業所得の金額、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできませんでした。ところが、「贈与によって取得したゴルフ会員権の名義書換料が譲渡所得の取得費に当たる」 とする最高裁判所の判決を受けて、平成十七年以降に相続または 遺贈によって取得した土地建物のうち農地や賃貸用の土地建物の登 記費用 (登録免許税、登記手数料等)は農業所得や不動産所得の計算上必要経費に算入することができるようになりました。したがって、相続登記費用のうち事業用の土地・建物に対応する部分を租税公課などとして各種所得の金額を計算することができます。

(税理士 西田 芳秋)