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税務相談

生前贈与によって、相続税を軽減することができますか(その3)

節税のしくみ

 相続税が節税になるしくみは、財産を減らすこと、財産の評価額が下がること、財産が非課税財産になること、財産をふやさないこと、法定相続人が増えることです。

 生前贈与は財産を減らすとともに、収益の上がる財産を相続人へ移すことで相続財産を増やさない効果があります。

贈与税のしくみ

 生前贈与には基礎控除が毎年110万円使える暦年贈与と相続時精算課税による贈与があります。暦年課税は3年以内の贈与を除き相続財産に加算することはありませんが、精算課税では相続が発生したときには贈与された時の価額を相続財産に加算して、前払いとしての贈与税額を精算することになっています。

 相続時精算課税制度は65才以上の親から20歳以上の子に財産を贈与する場合に限られ2500万円の基礎控除があります。これを超えて贈与を受けても一律20%の税率で課税されることから、まとまった財産を子に贈与できる点で生前贈与の恰好な手段になっています。

 いずれを利用するかは納税者の選択になりますが、一度精算課税制度を選択すると暦年課税に戻ることはできません。したがって相続財産の規模、財産の種類や金額、贈与の目的、贈与の相手方、贈与の時期などをもとに判断するとよいでしょう。

将来値上がりする財産の贈与は

 例えば、農業経営の移譲にともなって農地を後継者に贈与する場合、暦年課税では農地の生前一括贈与として贈与税の納税猶予の特例を受けることができます。この制度は贈与した人が亡くなるか、貰った相続人が亡くなるまで贈与税の納税が猶予されるもので、猶予された贈与税額は免除されます。贈与税の納税猶予の適用を受けた農地は相続時の価額で相続財産に加算することになりますから将来値上りしないことが明らかな場合はこの制度を利用することをお進めします。

 相続税の課税対象になった農地については、さらに相続税の納税猶予の適用を受けることができます。一方、相続時精算課税制度によって農地を贈与する場合は、贈与した時の価額を相続財産に加算することから、将来値上がりが見込まれる場合に選択すると贈与の効果が期待できます。

配偶者への居住用財産の贈与

 贈与税が非課税となるもの、自助努力を奨励するもの、同世代の生活を考慮した税制を活用すると、さらに大きな節税効果が得られるものです。

 相続後の配偶者の生活を保障するという観点から、配偶者に居宅を贈与するための特例が設けられています。婚姻期間が20年以上の夫婦間において、居住用の土地と建物またはこれらの財産を購入するための金銭を2000万円(基礎控除を含むと2110万円)まで無税で贈与できます。贈与された配偶者は翌年3月15日まで住んでいること、この特例を受ける旨の贈与税の申告書を提出することが必要です。今お住まいの居宅とその敷地(敷地のみでも可)を相続税評価額で2110万円相当を分筆(共有持分で可)して配偶者の名義に登記をします。この贈与は相続開始前3年以内の贈与であっても相続財産へ持ち戻す必要はありません。

住宅取得資金の贈与

 子や孫の独立を支援するものとして住宅資金の贈与の特例があります。直系尊属(65才未満でも可)20才以上の子または孫へ1000万円(相続時精算課税と併用すると3500万円)までの住宅取得資金を無税で贈与することができます。住宅取得資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅用建物を取得し、その日までに居住の用に供することが条件です。なお、23年分については土地の取得資金についても適用があります。この贈与は相続開始前3年以内の贈与であっても相続財産に加算する必要はありません。

障害者のための扶養信託

 相続人の中に特別障害者(身体障害者手帳に一級・二級と記載された者)がいる場合、将来の治療や生活を保障する目的で設けられた制度で、特別障害者である子を受益者(年金等の受給者)、信託会社を受託者(資金を運用して給付する者)、被相続人を委託者(掛金を拠出する者)とする信託の契約を結び掛金を拠出した場合は、最高6000万円までの受益権には贈与税はかからないことになっています。この特例を受けるためには信託会社を経由して障害者非課税信託申込書を税務署長に提出しなければなりません。

収益物件を生前に贈与する

 相続時精算課税制度を使って被相続人が所有している賃貸用共同住宅などを相続人へ贈与すると、相続財産が減って家賃収入が相続人のものになります。相続人は将来の相続税や遺産分割の代償金などの資金を貯めておくことができます。建築価額(外構工事を含む)が一億円の物件であれば固定資産税の評価額はおよそ6000万円、贈与する親のお客様が入居している住宅であれば借家権を控除した4200万円が贈与財産の価額になります。

 贈与税の課税価額は2500万円の基礎控除を差引いた1700万円ですから贈与税は20 %相当額の340万円になります。なお、親が入居者からお預かりしている敷金は現金で子に引き渡すこと、建物の借入金を子に負担させると負担付贈与となって譲渡所得が発生することになりますから留意して下さい。また、建築直後の移転は相続税の節税効果を比較してから実行して下さい。