「離婚時の財産分与 注意すべき点は?|住宅ローンへの影響 銀行に相談を」
質問
私Aは、夫Bと離婚する予定です。結婚後に取得した財産は、全てB名義の預貯金とローンで買った自宅の土地建物です。自宅土地建物の価値は2,000万円程で、住宅ローンの残債務額は500万円です。Bとの話し合いで、①Bは預貯金を取得して自宅から出て行くこと②Aは自宅を取得して今後も居住すること③住宅ローンはBが今後も返済してAに迷惑をかけないこと――を合意しました。どのようなことに気を付けるべきですか。Aが自宅を取得すると、Aに贈与税がかかりますか。
回答
婚姻後に形成された夫婦の財産は、夫(または妻)が相続や贈与で取得した特有財産でなければ、財産の名義に関わらず原則として共有財産になります。離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます(民法768条)。
本件では,住宅ローンが注意点です。特約により,借りた銀行に無断で担保物件の名 義を変更すると期限の利益を失い,一括返済を求められる場合があるからです。 したがって、Aは担保物件である自宅の名義変更で住宅ローンの返済に影響がないか、残債務額や今までの延滞の有無、今後の返済方法などをあらかじめ銀行に相談する方がいいでしょう。
住宅ローンについてAに迷惑をかけないとBが約束しても、Bが延滞すると、銀行は担保権を実行し、自宅は競売されてしまう恐れがあります。Aが自宅を確保できるか否かは、Bの支払い次第となります。
離婚による財産分与は、元々共有だった財産の名義を分けるものであり、贈与ではないので、原則として贈与税は生じません。ただし、分与された財産の額が、離婚に伴う夫婦共有財産の解消にしては多過ぎる場合や、そもそも贈与税を免れるために離婚を仮装した場合などは、贈与税がかかることがあります。
「相続する土地の国庫帰属は可能?|承認受け土地管理費10年分納める」
質問
田舎に高齢の父がいます。私は一人っ子なのでいずれ田舎の土地を相続することになります。しかし,私は仕事の関係で遠方に住んでおりとても田舎の土地を維持管理できそうにありません。また,宅地はともかく,山林や原野は売りに出しても買い手がつくとは思えません。このあいだ,ニュースで土地を手放して国庫に帰属させる制度ができると聞きましたが,どのようなものでしょうか。
回答
民法239条2項は,所有者のない不動産は国庫に帰属すると定めています。しかし,土地所有権を手放す具体的な方法については決まりがない状態でした。今後,土地の利用ニーズが減り所有者の関心も低くなると,管理がおろそかになり所有者不明となる土地が増えるのではないかと言われています。
そこで,2021(令和3)年に,「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」がつくられました。そこでは,相続・遺贈により土地所有権を取得した相続人が,国に対し,土地所有権を国庫に帰属させることの承認を申請するという制度が設けられています。 ただし,土地を国庫に帰属させると,国が管理コストを負うことになります。また,土地を手放すことができるとなれば所有者が管理をことさらおろそかにしかねません。
そこで,承認を受けた所有者は,10年分の土地管理費相当額の負担金を納めることとされています。また,建物の存する土地,担保権のついた土地,管理に過分の費用を要する土地などは承認の対象外です。建物の存在などを知りながら告げずに承認を受けた者は国に対し損害賠償責任を負います。なお,施行日は2023(令和5)年4月27日です。
(弁護士 長島佑享)