JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

「21歳の子の契約取り消せる?︱不安に付け込んだ場合は可」

質問

 大学生4年生の息子Aは、なかなか就職が決まらないため友人に相談したところ、B社の就職セミナーを紹介されました。B社に行き就職が決まらない不安を相談すると、B社の担当者から、「いままでの就職活動ではダメだ。就職セミナーを受講しないと一生就職できない。」と言われ、不安になったAは、1回10万円ものセミナー契約をしてしまいました。Aは21歳ですが、この契約を取り消すことはできないでしょうか。

回答

 Aは成人ですので、未成年者が法定代理人(多くは親)の同意を得ていないことを理由とした契約の取消しはできません(民法5条2項)。

 とはいえ、Aはまだ21歳の大学生です。社会生活上の経験が不足しているため正しい判断ができないこともあります。そこで、2018年に消費者契約法が改正されました。就職や結婚などの社会生活上の重要な事項について過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、契約の目的となるものが実現に必要であると告げ、社会生活上の経験が乏しい消費者を困惑させて契約させた場合には、消費者は、その契約を取り消すことができるようになりました(同法4条3項3号イ)。

 B社は、社会人経験のない大学生Aが就職という重要な事項について不安を持っていることにつけこみ、高額なセミナーを受けないと一生就職できないと不安をあおってセミナー契約をさせています。

 したがって、これに困惑して契約してしまったAは、このセミナー契約を取り消すことが可能です。ただし、Aが既に受け取っているテキストなどがあれば、それはB社に返却することが必要です(同法6条の2)。

「離婚慰謝料の遅延損害金は?︱判決確定日の法定利率による」

質問

 元夫は、令和元年1月頃から他の女性と同居を始めて帰らなくなりました。私は、 離婚の裁判をし、令和2年5月の判決で離婚と離婚の慰謝料が認められましたが、慰謝料の遅延損害金が年3%と書いてあります。しかし、インターネットで調べると、令和2年4月に民法がかわる前のことについては年5%とあります。元夫が他の女性と同居を始めたのは令和元年1月なのに、なぜ年3%なのでしょう。

回答

 この問題は、二つのことを考える必要があります。①「法定利率が年3%となるのはいつか」、②「離婚慰謝料の支払日はいつか」です。

 まず法定利率を考えます。

 民法改正で、令和2年4月1日から法定利率が年5%から年3%(変動)になりました(404条2項以下)。離婚慰謝料のような不法行為の損害賠償債務は、その発生日の法定利率が適用されます(最高裁昭和37年9月4日判決、419条1項本文)。したがって、発生日が令和2年3月31日以前であれば年5%(附則15条1項)、同年4月1日以降であれば年3%となります。

 では、離婚慰謝料の発生日はいつでしょうか。

 離婚慰謝料は、離婚により配偶者の地位を失った精神的苦痛への損害賠償なので、離婚の成立した時に発生します。不貞慰謝料とは性質が異なる権利です(最高裁平成31年2月19日判決)。裁判離婚では、判決の確定日が離婚の成立した日となるので、この日に離婚慰謝料が発生します。

 あなたの場合、令和2年5月の判決が確定した日に離婚慰謝料が発生しますから、その翌日以降に支払いを受けるときの遅延損害金の利率は年3%です(最高裁令和4年1月28日)。

(弁護士 長島佑享)