「孫と会うため面会交流求められる?︱審判申立は不可だが協議可能」
質問
私Aの息子Bは、10年前にCと結婚し、子Dが誕生しました。Dの出生以降、B、C、Dは私と同居していましたが、1年前にBとCが離婚し、CがDを連れて出て行ってしまいました。仕事で忙しいCに代わりDを育ててきたのは、祖母である私なのに、CはDに会わせてくれません。私は、家庭裁判所で、Cに対し、Dに会わせるよう面会交流を求める審判の申立てをすることができますか。
回答
父母が協議離婚するときは、子の面会交流等について協議して定めるものとしています。その協議が整わないときは、家庭裁判所が面会交流について定めることになります(民法766条1項、2項)。したがって、離婚した父もしくは母が子と会わせてもらえないときは、子を監護している親に対して、面会交流の審判を申立てることができます。ただし、この審判は、父と母との間の面会交流に関する協議が整わないことを前提としていますので、面会交流の審判を申し立てられる者は、子の父と母に限られます。父母以外の第三者が子の監護をしていたとしても、面会交流審判の申立ては認められません(最高裁令和3年(2021年)3月29日決定)。これは、事実上子を監護してきた第三者が家庭裁判所に面会交流を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定が現行法上存在せず、監護していたとしても、それをもってその者を子の父もしくは母と同視することができないためです。
したがって、祖母であるあなたは面会交流を求める審判の申立てをすることはできませんので、まずはBに面会交流調停の申立てをしてもらい、その中で、祖母のあなたとDとの面会についても、協議してもらうのがいいでしょう。
「車の売買をキャンセルしたい︱損害賠償請求される可能性あり」
質問
私は車を売るため、中古車買取り店Aで売買契約書にサインしました。しかし、後日、インターネットで検索すると、もっと高値で売れそうなので、キャンセルを申し出たら、「人気車種で売り先が決まっている。キャンセルするなら損害を賠償してもらう。」と言われました。売買契約書には解除の損害賠償や違約金について何も書かれていませんし、消費者契約法9条で、消費者は違約金を払わなくて良いのではないですか。
回答
売買契約は、対象物と代金額を決めて、売ります、買います、という合意をすることで成立します(民法555条)。契約が成立すると、契約当事者は約束した内容に拘束され、約束違反は債務不履行となり、通常生ずべき損害及び予見可能な損害の賠償責任を負います(民法415条、416条)。債務者の責任でない理由で生じた損害の責任は免れますが、「もっと高値で売れることが分かった」という理由はこれに当たりません。
消費者契約法9条は、消費者と事業者との契約において、契約解除に伴う損害賠償の額の予定又は違約金を定めがある場合、同種契約で当該事業者に生ずるべき平均的な損害額を超える部分を無効と定めます。例えば違約金100万円と定められていても、平均的な損害額が70万円であれば、30万円分の違約金の定めは無効となるわけです。
本件では、契約書には解除の損害賠償や違約金の定めがないので、同法9条には当たりません。Aから、通常被る損害や転売利益の損害の賠償を請求される可能性があります。キャンセルをするならば損害賠償の範囲や額を確認すると良いでしょう。
(弁護士 長島佑享)