「叔父の墓じまいできる?︱市町村に許可申請すれば可能」
質問
10年前に独身の叔父が亡くなりました。叔父の家の墓に埋葬したのですが、遠方で墓参りもままなりません。墓じまいということができると聞いたのですが本当でしょうか。
回答
近年、少子高齢化、核家族化、また宗教観の変化などから、遺骨を取り出して墓所を整理し、墓地を管理する霊園や寺院に返還するといういわゆる墓じまいのニーズが高まってきています。
墓じまいのためには、まず、取り出した遺骨をどうするか決めます。遺骨を、永代供養のための合葬墓など他の墓地に移す場合、改葬許可を得ることが必要です(墓地、埋葬等に関する法律5条)。具体的には、改葬先を確保するとともに、現在の墓地の管理者から埋蔵の証明書の発行を受けます。あなたが墓地使用者でないときは、墓地使用者の承諾書も必要です。これら資料を添えて、現在の墓地のある市町村役場に改装許可の申請をします。許可を得たら、石材店に依頼して墓所を開け、遺骨を改葬先に移します。
他方、取り出した遺骨を海などに散骨する場合、改葬許可は不要です。ただし、散骨の場所や方法について規制の有無や内容を個別に確認する必要があります。
また、改葬に際しての典礼の方式やいわゆる離檀料、また指定石材店をめぐるトラブルも時折見受けられますので、事前にその墓地の規則や慣行を確認しておくとよいでしょう。
また、遺骨を取り出した後は、通常、石材店に依頼して墓石や墓誌等を撤去してもらい、その区画を更地にして墓地を管理する寺院や霊園に返還します。墓地によっては墓石の撤去などについても個別に手順が定められていることがありますので注意が必要です。
「生前に放棄した母の遺産 相続できる?︱権利を主張できる」
質問
私Aの父が亡くなったとき、今回の父の相続で私Aに100万円多く相続させるから、次の母Bの相続は放棄するよう、妹Cから頼まれました。私は、父の遺産を妹より100万円多く取得した上で、「私Aは、母Bの相続を放棄します。母Bの遺産は、全て妹Cが相続することに異議がありません。」との書面に署名押印しました。しかし、後日、母Bに確認すると、母Bには多額の貯金があることがわかりました。私は、もう母Bの遺産を相続することはできないのでしょうか。
回答
署名押印した書面の「私Aは、母Bの相続を放棄します」との部分は、生前の相続放棄のようですが、判例上、相続開始前、つまり生前の相続放棄は無効とされています(東京高裁昭和54年1月24日決定)。したがって、この書面では、あなたは相続を放棄したことにはなりません。
次に、「母Bの遺産は、すべて妹Cが相続することに異議がありません。」との部分は、生前の遺産分割協議のようですが、この生前の遺産分割協議も、また、無効とされています(東京地裁平成17年12月15日判決)。遺産分割は、相続した遺産を各相続人に分割する手続ですが、遺産や相続人の範囲は、相続の開始によって初めて確定するものですので、相続開始後における各相続人の合意によって成立した協議でなければ効力を生じないと考えるべきだからです。
また、生前にこのような約束をしながら、死後に相続権の主張をすることが権利の濫用ではないかと言われることもありますが、これについても、権利の濫用には当たらないとされていますので(上記東京高裁決定)、そのような心配も無用です。
したがって、あなたは、母Bの相続が発生したときには、相続権を主張できます。
(弁護士 長島佑享)