JA埼玉みずほ

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法律相談

遺体を自家用車で運ぶのは違反?︱原則合法も感染予防など制限あり」

質問

 入院先で叔母が亡くなりました。ご自宅へ線香を上げにいきご家族と話をしていたら、「霊きゅう車は嫌なので自家用車で自宅まで連れて帰り、納棺をした」というのです。遺体を自家用車で運ぶのは法違反ではないのでしょうか。

回答

 遺体の搬送自体を一般的に禁止する法律はありません。家族が自家用車で遺体を自宅まで連れ帰ることは原則として法律違反ではありません。

 もっとも、法令上特別な制限がされていることがあります。例えば、結核や新型インフルエンザ等により亡くなった遺体の移動については、感染症予防法30条による制限があります。

 また、タクシーを利用して搬送することは禁止されています。道路運送法13条を受けた旅客自動車運送事業運輸規則52条13号が、乗客は遺体をタクシーの車内に持ち込んではならない旨を定めています。なお、遺体搬送業者は、貨物自動車運送事業法に基づき、霊きゅう車用の一般貨物運送業の許可を受けて遺体搬送をしています。

 さらに、自家用車で搬送をすることができるといっても、遺体を物理的に損傷するような方法をとれば死体損壊罪(刑法190条)に問われかねません。自宅に連れ帰った後に適切な処置を行わなければ死体遺棄罪(同)が成立しうるところです。搬送中に、これらの犯罪を犯そうとしているのではないかと疑われて警察官から職務質問(警察官職務執行法2条1項)をされるおそれもあります。

 そのため、搬送にあたっては、死亡診断書等の書類を携行し、自家用車への乗せ方や連れ帰った後の処置について葬儀業者とあらかじめ相談しておくことが必要でしょう。

「親権者が遺産分割協議書に押印できる?― 特別代理人と遺産分割協議を」

質問

 夫Aが死亡し、相続人は妻の私Bと未成年の子C、Dです。遺産は自宅と預貯金です。私は子C、Dに遺産を法定相続分どおり分けてやりたいと考えています。法定相続分どおりの遺産分割協議書ならば、私が子C、Dの親権者代理人として署名押印しても問題ないですか。

回答

 遺産分割協議は、被相続人の遺産をどのように分けるか共同相続人間で協議して決めることです。遺産分割は、本来各相続人が自由に決めるものでありますが、未成年者は判断能力が不十分な為、法律上親権者が子に代わって遺産分割協議をすることになります。

 しかし、母Bが子C、Dの親権者として遺産分割協議を行うと、B、C、Dは相続人として相互に利害が対立する関係にありますから、Bが1人で遺産分割協議を成立させることができることになり、子C、Dの権利が侵害される恐れがあります。

 このように利害が対立する行為(利害相反行為)については、親権者が子を代理することは認められないため、Bは子C、Dのために家庭裁判所に遺産分割を行うための特別代理人選任の申立をして、選任されたC、Dの特別代理人との間で、遺産分割協議をしなければなりません(民法826条)。特別代理人は、推薦をすれば、叔父、叔母等の親戚や友人が選任されることが多いです。

 あなたは、子C、Dに法定相続分どおり遺産を分けるのだから、自分が子C、Dの親権者法定代理人として、遺産分割協議書に署名押印しても問題はないと考えたよう(有効)ですが、利益相反行為にあたるか否かは、当該行為の外形で客観的に決するべきであって、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とすべきではないと解釈されています(最高裁昭和56年10月30日判決)。

(弁護士 長島佑享)