亡夫の弟の相続放棄はいつまで可能?-妻が義弟の相続人だと知ってから3か月間
質問
私の夫Aが亡くなって半年後、金融会社からAの弟Bの借金の督促状が届きました。Aが亡くなる2か月前にBが借金を残して死亡し、Aが唯一の相続人でした。Bとは、30年以上音信不通で、Aも私もBの死亡を知りませんでした。
相続放棄は死亡から3か月以内と聞きますが、私の自宅はAの遺産ですからAの相続は放棄できません。Aについては相続をし、Bの相続だけ放棄することはできますか。
回答
相続放棄は、先に発生したBの相続と、次に発生したAの相続と、相続毎にすることができます。あなたがBの相続を希望しないなら、Bの相続についてだけ相続の放棄をすることになります。
相続放棄のための熟慮期間は、相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより自分が相続人となった事実を知った時から3か月以内です(民法915条1項。最判昭和59年4月27日)。
本件のように、AがBの相続について承認又は放棄をしないまま死亡した場合は、Aの相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算すると規定されています(民法916条)。
この起算日は、単にAの相続を知った時ではなく、Aが放棄しなかったBの相続人の地位をAから相続した事実を知った時となります(最判令和元年8月9日)。Bの相続人となったことを知らなければ、Bの相続につき熟慮できないからです。
従って、あなたがBの相続人となった事実を知った時から3か月以内にBの相続について放棄することができます
(弁護士 長島佑享)