「借地期間満了による建物収去義務 建物買取請求権を行使し地主に転嫁」
質問
Aは地主Xから土地を賃借して木造住宅を建築し、そこに長期間居住した後、高齢となって死亡しました。相続人は子Bです。Bは別に住宅を構えていて、この建物には居住しておらず、A死亡後は空き家でした。しかし、BはⅩに地代は払い続けていました。その後、借地契約は期間満了となり、XはBに更新拒絶の通知をして、建物を収去(撤去)して土地を明け渡すよう求めました。Bは契約の終了と土地明け渡しに異論はないが、建物収去費用を負担することを拒んでいます。Bは自ら費用を負担して建物を収去しなければなりませんか。
回答
借地人は、借地契約に基づいて借地上に建物を建築し、これを所有することができますが、借地契約が終了したときには、建物を収去して土地を原状に復して明け渡さなければなりません(民法621条)。
しかし、借地借家法は、その例外的な取り扱いとして、借地人に対し、借地人が建物などのその土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求する権利(建物買取請求権)を認めました(借地借家法13条)。
建物買取請求権は、借地人からの一方的な意思表示によって売買契約を成立させることのできる権利(形成権)です。ですから、借地人が地主に対してこの権利を行使すると売買契約が成立し、同時に権利を行使した時点で建物の所有権は地主に移転します。
この結果、借地契約の期間が満了した際、借地人Bが地主Ⅹに対して建物買取請求権を行使すると、借地上の建物の所有者は地主Xとなりますから、Bは建物収去費用を負担しなくて良いことになり、地主が自ら費用を負担して建物を収去しなければなりません。
ただし、建物買取請求権は不誠実な借地人の利益のために認められる権利ではありません。地代不払いなどの借地人の債務不履行により契約が解除された場合には、借地人は建物買取請求権を行使することはできず、自ら費用を負担して建物を収去して土地を明け渡さなければなりません。
「自宅裏庭にお墓をつくれますか?︱都道府県知事の許可が必要」
質問
私の妻が、姑と同じお墓には入りたくない、自宅の庭にお墓をつくってほしいと言いだしました。確かに庭には十分なスペースがあります。自宅の庭にお墓をつくることは法律上許されるのでしょうか。
回答
お墓に関する法律としては、墓地、埋葬等に関する法律という法律があります。同法によると、埋葬又は焼骨の埋蔵は、「墓地」以外の区域に行ってはなりません(4条1項)。ここで墓地とは、いわゆるお墓を設けるために都道府県知事(市又は特別区は市長又は区長。以下同じ)の許可を受けた区域をいいます(2条5項)。墓地を経営しようとする者は都道府県知事の許可を受けなければなりません(10条1項)。ここでいう「経営」とは、広く墓地を設置、管理、運営することを意味すると解されています。
このように墓地設置は許可制です。これは、公衆衛生の確保と国民の宗教的感情の尊重のためです。無許可で墓地を設置すると刑事罰を科せられます。
あなたの場合も、許可を得れば墓地設置が可能です。しかし、墓地経営の永続性と非営利性を確保する見地から、地方公共団体や宗教法人等でなければ許可を得られないのが実情です。個人が許可を得られるのは、山間等人里遠く離れた場所で墓地が全くないような特別な場合に限られています。
したがって、あなたが許可を得て自宅の庭にお墓をつくることはほぼ不可能です。
なお、慰霊碑をつくり、遺体や焼骨と関係のない遺品等を納めることは自由です。また、樹木葬や散骨の利用を検討するのも一方法でしょう。樹木葬や散骨の適法性には議論もありますので機会があれば改めてご説明します。
(弁護士 長島佑享)