「不貞配偶者からの婚姻費用分担の請求―子の養育費以外支払義務なし」
質問
私は、妻と7歳の子と同居していましたが、妻が子のピアノ教師と頻繁に連絡を取り合うので妻のスマホを見たところ、母親と子のピアノ教師との会話とは到底思えない内容が残っていました。妻は、子を連れて出て行ってしまい、今は、ピアノ教師の近くのアパートで子と暮らしています。妻は、私に早く離婚するよう迫り、同時に、妻と子の生活費と養育費を払え、と請求してきました。どうしたらよいでしょう。
回答
あなたの言い分を聞く限り、あなたが別居生活を強いられているのは、専ら妻の不貞行為によりますから、夫婦の同居義務・相互の生活保持義務(民法752条)に違反しているのは妻です。夫婦の婚姻生活を維持するために必要な費用を婚姻費用といいます。生活費も、養育費も婚姻費用の1部です。たとえ夫婦が別居し又は婚姻関係が破綻していても、婚姻費用分担義務は影響されません。
しかし、別居や、婚姻関係破綻の主たる責任のある配偶者が、相手方配偶者に対して婚姻費用の分担を請求することは、信義則又は権利の濫用として認められません(大阪高裁平成28年3月17日決定等)。従って、あなたの場合でも、あなたが見つけた証拠によって、妻の不貞行為によって別居することになり、あなたと妻との婚姻関係が破綻したと認められれば、妻のあなたに対する婚姻費用分担の請求は、養育費相当分以外は、認められないでしょう。子の養育費は、あなたの収入等の諸条件により裁判所が機械的に計算することが多いです。あなたは、妻と、養育費について話合い、協議が整わないときは、家庭裁判所の審判で解決するのがよいでしょう。
「土地を分筆相続したい―隣地所有者と境界確認必須」
質問
父が亡くなり、長男Aが父から預かった遺言公正証書には「甲土地を添付図面の通りに分けて、図面ア部分をAに、図面イ部分を長女Bに相続させる」と記載され、図面には、甲地と隣地(所有者はBです)との東側境界点①から甲地の境界に沿って南方向へ12mの点②、甲地と隣地との西側境界点③から甲地の境界に沿って南方向へ12mの点④が記載され、点②と点④を直線で結ぶ線の北側にイ、南側にアと書かれています。Aは、Bに、遺言どおり甲地を分筆して相続しようと言いましたが、Bは、遺言が気に入らないらしく、分筆するための境界確認に応じません。遺言どおり分筆して相続登記するにはどうしたらよいですか。
回答
甲地は1筆の土地ですから、これをア部分とイ部分に分筆登記をすることが必要です。分筆登記をするには、隣地所有者Bに立会を求め、甲地と隣地との境界点を確認し、測量することが必要です。Bに境界確認を拒否されると、分筆登記に必要な測量ができません。
Bが境界確認を拒否する場合には、Aは、Bを被告として、B所有の隣地と甲地との境界点①、③を直線で結ぶ線が甲地と隣地との境界であることの確認訴訟を提起して判決を得る方法があります。Bが分筆後のイ部分をB名義に所有権移転登記しない恐れがある場合には、併せて、分筆後のイ部分につきBへの所有権移転登記を命ずる判決を得る方法もあります。この裁判を提起するには、分筆用の測量図面の添付が必要です。
分筆登記後のアの部分は遺言によりAが単独で所有権移転登記できます。
(長島弁護士)