「エアコン設置は家主買取り?「買い取らない」特約有効」
質問
借家契約を締結した際、家主にエアコンを取り付けたいと述べたところ、家主から借家契約終了時に買取り請求しないことを特約条項として契約書に明記するよう要求されました。このような内容の特約も有効なのでしょうか。
回答
旧借家法においては、賃借人が家主の同意を得て建物に付加した造作については、借家契約終了時に、賃借人は家主に造作を時価で買取るよう請求することができ(同法5条)、この造作買取請求権を排除させる特約をしても、そのような賃借人に不利な特約は無効とされてきました(同法6条)。
しかし、借地借家法施行(平成4年8月1日)後は、賃借人が造作買取請求権を有することは旧借家法と同様ですが、重要な違いは、借地借家法では造作買取請求権を排除させる特約も有効として扱われることになったことです(借地借家法37条、33条)。
従って、借地借家法の下では、家主は賃借人が建物に造作を取り付けることには同意するが、その買取りはしないという特約も有効となります。
このことは、借地借家法施行前に締結された借家契約にも適用されるため(借地借家法附則4条但書)、旧借家法時代に締結された借家契約における造作についても、借地借家法施行後に買取りしない旨の特約をすれば、その特約は有効となります。
造作とは「建物に付加された物件で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいい、賃借人がその建物を特殊の目的に使用するために特に付加した設備を含まない」と解されていますので、建物に付加したエアコンは造作にあたります。
「相続人の一人が行方不明、相続手続は?不在者財産管理人と分割協議」
質問
父Aが亡くなり、相続人は子B、C、Dの3人です。Dは多額の借金を抱えて夜逃げし10年以上行方不明です。BがAの遺産相続を進めるには、どのようにしたらよいですか。Aの遺言書はありません。
回答
父Aの遺産相続手続を進めるためには、Bは共同相続人C、Dと遺産分割協議をし、協議が整わないときは家庭裁判所に遺産分割調停または審判の申立をし、調停または審判において遺産分割をすることになります。
しかし、Dが行方不明であると、協議することも、調停や審判を申立てることもできません。このため、Aの遺産相続を進めるためには、BがDの従来の住所地を管轄する家庭裁判所に、Dのための「不在者財産管理人選任の申立」をすることが必要です。この申立に必要な書類は、Dの戸籍謄本、戸籍の附票、不在の事実を証する資料等です。Dの不在者財産管理人が選任されると、その財産管理人がB、Cと遺産分割協議をし、協議が整わないときは調停や審判手続に出頭します(民法28条)。
財産管理人はDの利益を害する協議はできないため、遺産分割協議の内容については事前に家庭裁判所の許可が必要となります。ですから、全財産をBが単独取得するような遺産分割協議は認められませんし、Dの法定相続分1/3に見合う遺産または代償金の支払いを求められることになるでしょう。
財産管理人は、Aの遺産分割協議が終わっても、原則として不在者Dが現れるまで、または死亡(または失踪宣告《民法30条》)まで、Dの財産管理を続けます。管理人の報酬は家庭裁判所が決定し、Dの財産から支払われます。
(長島弁護士)