「借主からの中途解約が心配―リスク回避に向け最善策を」
質問
私の土地にレストラン用建物を建て、賃貸する計画です。建物は私が全額JAからの借入金で建築し、賃料収入で分割返済します。将来、借入金が残されたまま、借主が建物から撤退しないか心配です。借主からの契約書案では「借主は、敷金・保証金を放棄して、何時でも中途解約できる」とあります。大丈夫でしょうか。
回答
建物賃貸借契約書に「借主は敷金・保証金を放棄して、何時でも中途解約できる」との特約条項があると、借主は貸主の同意を得なくとも、敷金と保証金を放棄すれば、契約期間中であっても、自由に契約を解除して建物から撤退することができます。
この場合、預り敷金および保証金の額が借入金残高を上回っていれば格別問題はありませんが、そうでない場合には、貸主は賃料は入らないのに借入金を返済しなければならないという、不測の損害を被る恐れがあります。
このため、あなた(貸主)としては、借主側の契約書案どおりの中途解約条項で賃貸借契約を締結しても問題がないかを慎重に検討する必要があります。具体的には、(1)「借主は、契約期間中、中途解約できない」、(2)「借主は、一定期間(例えば賃貸日から10年間など)、中途解約できない」、(3)「借主は、貸主の借入金残高相当額の違約金を支払うことを条件として、中途解約できる」等に変更してもらうか、(4)敷金・保証金の増額を求めるなどして、貸主の被る将来リスクの軽減化を図るべきでしょう。
「夫の先妻の子に財産を渡したくない―遺言と養子縁組の活用」
質問
Aには、元夫Bとの間の子Cがいます。AはBと離婚後Dと再婚し、Dとの間に子はいません。ただ、Dには先妻Eとの間の子FとGがいます。AはD、C夫婦、C夫婦の子H、Iの6人家族です。もし夫Dが死亡したら、Dの財産を全部AとCが相続し、EとGには渡したくありません。可能でしょうか。
回答
EとGは、Dの子ですから、相続放棄をしない限り、Dの相続人となり、妻AとともにDの遺産を共同相続します。その場合の法定相続分は、妻Aが2分の1、子E、Gが各4分の1となります。AB間の子Cは、Dの子ではありませんから、CがDと養子縁組をしない限り、Dの相続人にはなりません。従って、Dが死亡した場合、Dの遺産を子E、Gには一切渡さずに、全遺産をAとCが取得するということはできません。
しかし、Dが、例えば「妻Aに全財産の2分の1を相続させ、残りの2分の1をCに遺贈する。」との遺言をすれば、Cは相続人ではありませんが、Dの遺産を取得することができます。ただ、この場合でも、E、Gは、AとCに対して遺留分として各8分の1の権利があります。
また、DがC、H、Iの3人と養子縁組をすれば、Dの子はE、G、C、H、Iの計5人となりますから、EとGの法定相続分は各10分の1、遺留分は各20分の1に減少します。
このように、EとGはDの子ですから相続分や遺留分を奪うことは出来ませんが、Dが遺言をし、さらにC、H、Iと養子縁組をすることにより、E、Gの相続分および遺留分を減少させることができます。
(長島弁護士)