「契約解除後、不動産業者への報酬は?—支払義務は事情により異なる」
質問
私は貸宅地の借り手探しを不動産業者のAに依頼しました。Aは借主としてBを探してくれましたが、提示された地代が安いため、Aに依頼していた仲介を断り、直接、私がBと交渉して以前提示された額より高い地代で賃貸契約を結ぶことができました。ところが、この事実を知ったAは、私に仲介手数料を支払えと請求してきました。支払わなければなりませんか。
回答
あなたは、貸宅地賃貸の媒介(仲介)を不動産業者Aに依頼し、その後Aとの仲介契約を断り(解除)、あなたが直接交渉してBとの間で賃貸契約を成立させたとのことですが、そのような場合でも、Bと賃貸契約を成立させることができたのはAの仲介による成果だと法的に評価されることがあります。その場合には、あなたはAに仲介手数料(仲介報酬)を支払う義務が生じます。例えば、Aの仲介によりBとの賃貸条件は概ね決まり、若干調整すれば契約が成立するという段階になって、Aを排除して直接Bと交渉して契約を成立させたような場合であり、この場合あなたは故意に仲介契約を妨害したと認められ、Aに業界所定の仲介報酬を支払う義務が生じます。
しかし、Bと賃貸条件が折り合わず、賃貸交渉は打ち切られ、Aとの仲介契約も解除し、かつ、その後相当期間経過後に、あなたがBと直接交渉して賃貸契約を成立させた場合には、あなたが故意に仲介契約を妨害したとはいえないでしょうから、その場合にはあなたはAに仲介報酬を支払う義務は生じません。
いずれにせよ、不動産業者に仲介報酬を支払う義務があるか否かは個別具体的な事情によって結論が異なりますから、法律専門家に相談されるのがよいでしょう。
「財産分与・養育費離婚後に請求は?—早い時期に協議・申立てを」
質問
私は6年前に結婚して2人の子どもがいますが、夫の暴力が原因で1年前に協議離婚しました。離婚の際、子どもの親権者に私がなることは合意できましたが、財産分与や子の養育費については合意できませんでした。今からでもこれを元夫に請求できますか?
回答
結論から申し上げますと、財産分与も子の養育費も請求することができます。そして、元夫と協議が見込めないのであれば、家庭裁判所に財産分与と養育費の調停を申し立てる必要があります。
まず、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を離婚する際に又は離婚後に分けることをいいます。そして、財産分与は離婚の時から2年を経過した場合には請求することができません(民法768条2項)。したがって、あなたは、元夫と協議による合意が見込めないのであれば、離婚から2年を経過する前に、家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てる必要があります。
次に養育費とは、未成熟の子にかかる衣食住等の生活費や教育費、医療費等をいいます。受け取れる期間は、子の高卒時や成人の時、大卒時までなど扶養義務者の資力や社会的地位等によって判断されます。財産分与のように請求期間の制限はありませんが、請求前に発生した過去の養育費の支払いが認められることは少ないと思われますので、あなたは申立てを急ぐべきです。
近年、離婚の成立を急ぐあまりに、財産分与や養育費の支払いに関する合意を後回しにしがちですが、財産分与や養育費は離婚後の生活の経済力や子の貧困にもかかわる問題ですので、できる限り離婚と同時に合意することが望ましいといえます。
(弁護士 長島佑享)