「遺留分の請求どう進める?—まずは受遺者全員に減殺請求通知」
質問
母が財産3000万円を残して死亡しました。相続人は長男A、長女B、次男Cの3人ですが、遺言により長女Bが2000万円、次男Cが1000万円を相続しました。この場合、長男Aは遺留分として誰に、いくら請求できますか。
回答
相続財産は3000万円ですから、法定相続分は各自1000万円(1/3)です。遺留分の割合は各6分の1(1/2×1/3)ですから、遺留分は各自500万円(3000万円×1/6)となります。従って、長男Aは遺留分の全額が侵害されていますから、請求金額は500万円となります。 減殺請求は原則として受遺者全員にすべきですから、長男AはB、Cにそれぞれ減殺請求します。Cは法定相続分相当の1000万円しか遺贈を受けていませんが、減殺請求の相手方とします。
遺留分は、遺贈の場合、その目的の価額の割合に応じて減殺します(民法1034条)。従って、長男AがB、Cに減殺請求する金額は、次の算式で計算した金額となります。
減殺請求額=遺留分額×各受遺者の遺留分を超える部分の受遺額÷全受遺者の遺留分を超える部分の合計額
従って、Bに対する請求金額は500万円×1500万円÷(1500万円+500万円)=375万円、Cに対する請求金額は500万円×500万円÷(1500万円+500万円)=125万円となります。
長男Aは遺留分侵害事実を知ってから1年以内に減殺請求することにより、自己の遺留分額まで遺贈の目的物を取り戻し、または、その価額弁償を受けることができます。なお、減殺請求通知は、減殺請求金額を記載する必要はなく、単に「自己の遺留分が侵害されているので減殺請求する」旨を記載すればよいです。
「亡き父名義の預金口座の取引履歴知りたい—共同相続人の一人でも可能」
質問
父が亡くなりました。預金残高が少ないので、同居していた長女に尋ねましたが、納得のいく説明がありません。相続人は長女と私の2人ですが、私が単独で金融機関に父名義の預金口座の取引履歴の開示を請求することはできますか。
回答
預金者が死亡した場合、金融機関は、共同相続人全員の同意がないと、被相続人名義の預金口座の取引履歴を開示することはできないとして、共同相続人の一人からの開示請求には応じない態度でした。
しかし、最高裁判所は平成21年1月22日判決により、「預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、他の共同相続人の同意がなくとも、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。」との判断を示しました(判例タイムズ1290号132頁)。
この結果、共同相続人の一人であるあなたは、金融機関に対して、単独で、亡き父名義の預金口座の取引経過(入出金明細表)の開示を請求することができます。金融機関は、開示義務がありますから、これを拒否すると損害賠償責任を問われることもあります。
あなたが金融機関に開示請求する場合には、相続人であることを証明し、開示を求める取引期間を特定して請求します。費用のかかる場合もありますので、金融機関に問い合わせしましょう。
(弁護士 長島佑享)