借家人からの造作買取請求―特約すれば拒否可能
質問
借家人が貸家から立ち退くことになりました。借家人が費用を自己負担して張り替えた畳を時価で買い取るよう請求してきました。家主はこれを買い取らなければなりませんか。
回答
借地借家法は、「建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。」(同法33条)と規定しています。造作とは、「建物に付加された物件で、賃借人の所有に属し、かつ、建物の使用に客観的便益を与えるもの」と解されており、具体的には畳、建具のほか、物干場、台所の釣戸棚、水道設備などが判例上挙げられています。
借家人が家主に対して造作買取請求権を行使するためには、家主の承諾を得て建物に付加した造作でなければなりません。家主に無断で取り付けた造作は対象外です。さらに、借家契約が期間の満了または解約の申入れにより終了したときであることが必要です。したがって、家賃不払など借家人の債務不履行により契約解除となった場合には、借家人は家主に対して買取請求はできません。
なお、家主が造作を買い取るべき場合には、「時価」で買い取ることになります。時価は、建物に取り付けられた状態で評価されます。ただし、この造作買取請求権は、借家契約を締結する際に、「造作買取請求権を排除する」旨を特約で明記しておけば、借家人から造作買取請求されることはありません(同法37条)。
無断欠勤繰り返す従業員を解雇したい―一連の解雇手続が必要
質問
私は農業を営み、従業員数名を雇用し、野菜の生産、販売をしています。従業員の一人が、理由を明らかにしないまま、無断で欠勤を繰り返し、困っています。解雇することができますか。
回答
合理的な理由のない無断欠勤は、労働者の基本的義務である労務提供義務に違反する債務不履行となります。
欠勤を繰り返す従業員を解雇するには、次の手続きをとることが必要です。
(1)まず、本人に、欠勤の理由(言い分)を十分に説明する機会を与えること。その際には、議事録を作成し、具体的なやりとりを記録し、証拠化しておくことが大切です。後日「言い分を述べる機会が与えられなかった」などとクレームをつけられるからです。
(2)欠勤に正当な理由がない場合には、改善に向けた指導を行い、以後欠勤しないよう説得し、自覚を促すこと。これをしないまま解雇してしまうと、後日、「弁明や改善の機会を与えられず、一方的に解雇された」などと、解雇無効を主張される恐れがあるからです。この改善指導過程についても、具体的に記録しておくことが大切です。
(3)改善指導を行っても、無断欠勤が改善されない場合には、解雇もあり得る旨の警告を発します。警告にもかかわらず、無断欠勤が改善されないときは、解雇することが可能となります。解雇する際には、無断欠勤の事実を証明する証拠を確認しておくことが大切です。
なお、従業員が契約社員(例えば1年とか2年とか契約期間の定めのある従業員)の場合には、上記一連の手続きを経ずに、原則として契約期間の満了日をもって雇止めすることができます。
(弁護士 長島佑享)