野焼きで住宅火災が発生しました ―重過失なら賠償責任
質問
田んぼでわらを野焼きしたところ、火が近くにあった廃材に燃え移り、それが原因となって近くの住宅4棟が全・半焼しました。被害者から損害の補償を求められています。野焼きした私は、損害賠償責任を負いますか。
回答
野焼きとは、廃棄物(ゴミ)を屋外で焼却することです。野焼きは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、各都道府県の「生活環境保全条例」により、原則として禁止されています。
過失(不注意)によって、他人の権利や利益を侵害した場合、民法上の不法行為として損害賠償責任を負担しますが、誤って火災を起こした場合には、失火法という特別法が適用され、失火者(誤って火災を生じさせた者)は、「重過失」がなければ損害賠償責任を負担しません。重過失とは、通常人に要求される程度の相当な注意をしなくても、わずかの注意さえすれば、たやすく違法、有害な結果の発生を予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指します(最高裁昭和32年7月9日判決民集11巻7号1203頁)。
あなたが田んぼや畑で麦わら等、農業上生じた廃棄物を野焼きした時の天気、気温、湿度、燃やした量、燃やした場所、風向き、時間帯、周辺の状況などに照らし、わずかの注意さえすれば、たやすく近くの廃材や隣家への延焼の危険を予見することができたにもかかわらず漫然、これを見過ごしたと認められる場合には、損害賠償責任を負うことになります。
妻が実家で出産後帰ってきません ―夫に婚費分担の義務
質問
私は結婚して3年目ですが、妻が実家で出産した後、そのまま実家から帰ってきません。先日、妻から手紙で、私と離婚したいことと、生活費を支払うよう要求してきました。私は妻に生活費を払わなければなりませんか。
回答
夫婦は同居し、相互に協力し扶助し合う義務があります(民法752条)。妻が実家で出産した後、理由なく自宅に帰らないというのであれば、妻は同居協力扶助義務を果たしていないことになります。
しかし、妻が自宅に帰らないのにはそれ相当の理由のある場合が多いですから、一方的に妻に同居協力扶助義務違反があると断定することはできません。それゆえ、妻に一方的に責任のあることが明白な場合でない限り、あなたは、別居期間中、妻の婚姻費用(生活費)を分担しなければならないでしょう。
妻が出産後実家から帰らないという場合、妻の生活費を妻の両親らが負担し、妻は住居費や生活費を支払っていないことも少なくありません。しかし、そのような場合であっても、夫は婚姻費用を分担しなければなりません。妻の生活費は、扶助義務を負っている夫が負担すべきだからです。
そこで、別居中の婚姻費用をどのように分担するかは、夫婦間で協議して決めるのが原則です。夫婦間で協議ができない場合には、家庭裁判所の調停または審判で決めることになります。調停や審判では「養育費・婚姻費用の算定方式」(算定表)に基づいて算出した結果を基準にして、夫が妻に対して支払うべき婚姻費用(生活費)の額を決定します。
(弁護士 長島佑享)