家主の地代不払と借地契約の解除 ―借家人は借家権を主張できず
質問
私は、家主Aより借家をして、妻子と暮らしています。先日、借家している建物の敷地の所有者Bから「家主Aが地代を滞納しているので、敷地の賃貸借契約を解除した。建物を取り壊すので、明け渡してくれ」と請求されました。明け渡さなければいけませんか。
回答
家主Aが地主Bから土地を賃借し、その借地上に貸家を建て、あなたがAから同建物を借家している場合、借家契約はその敷地の利用を前提としていますから、敷地の利用権が消滅すると、借家契約も存続することができません。借地契約と借家契約の関係は、基本的に「親亀こけたら子亀もこける」関係にあります。したがって、家主A(借地人)が借地契約上の義務を怠り、地主Bから借地契約を解除された場合、借家人は地主Bの明け渡し請求に従わなければなりません。借地上の建物の賃貸借は地主の関与なしに行われますから、借家人が居住していても、地主を保護する必要があるからです。
なお、借地契約が契約期間満了により終了した場合も、基本的には上記と同じです。ただ、この場合には、借家人が借地権の期間が満了することをその1年前までに知らなかったときは、借家人が裁判所に申立てすれば、1年を限度として明け渡しを猶予してもらうことができます(借地借家法35条)。
また、地主と家主が合意して借地契約を解除した場合には、特別の事情がないかぎり、地主は、借家人に対して合意解除を理由として建物の明渡しを請求することはできません
(最高裁昭和38年2月21日判決)。
借家人の破産と契約解除 ―賃貸人は解除できず
質問
私は貸家経営をしています。先日、裁判所から賃借人Aについて破産手続きを開始する旨の決定書が送られてきました。賃借人が破産開始決定を受けた場合、借家契約はどうなりますか。
回答
破産法が改正された平成16年以前は、借家人が破産開始決定を受けた場合には、契約期間内であっても、賃貸人は解約の申し入れをすることができました(改正前の民法621条)。
しかし、平成16年の破産法の改正により、借家人が破産した場合、賃貸人からは解約の申し入れができなくなりました。
逆に、借家契約を解除するか継続するかは賃借人の破産管財人の判断に委ね、破産管財人が今後も借家契約を継続することが借家人の生活や営業に必要であるかなどを考慮して、借家契約を解除するかどうかを決めることにしました(破産法53条1項)。
しかし、そうすると賃貸人は破産管財人が借家契約を解除するのかどうかがわからず、不安定な状態におかれます。
そこで、これを解消するため、賃貸人は、破産管財人に対して、借家契約を解除するのか継続するのかを相当期間内に確答するよう催告することができることにしました。そして、破産管財人から相当期間内に確答がなかった場合には、借家契約を解除したものとみなすことにしました(破産法53条2項)。
ですから、賃貸人としては、借家人Aの破産管財人に対して、借家契約を解除するのかどうかについて、相当期間内に確答するよう催告することが必要です。
(弁護士 長島佑享)