JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

「亡き息子の家に住み続けられる? 契約違反ない限り使用可」

質問

 私は、長男からついの住み家を造ってあげるから同居しようとの申し出を受け、私名義の土地に長男が建物を建てて同居してきました。長男は先月死亡しました。長男の嫁は数年前に子ども(私の孫)を連れて出ていき、別居中です。私は今後も建物に住み続けることができるでしょうか。

回答

 あなたと長男との間には、あなたは長男に土地をあなたも居住する建物の敷地として無償で使用させる、長男はあなたに建物をついの住み家として無償で使用させる、との合意(「使用貸借契約」)が成立していたと思われます。

 長男の死亡により、建物は、長男の嫁(ただし、離婚していれば相続人にはなりません。)と孫が共同で相続しますから、あなたは、嫁と孫から建物を無償で借用していることになります。

 そこで、もし嫁や孫から建物の明渡しを求められたら、あなたは出ていかなければならないかが問題となります。

 使用貸借契約の借用物は、(1)契約で返還時期を定めた場合にはその時期、(2)返還時期を定めていない場合には、借り主が契約に定めた目的に従い使用収益を終わった時、に借用物を返還することになります(民法597条)。

 長男はあなたに建物をついの住み家として使用させる意思(目的)で使用させ、あなたも建物に終生住み続けるつもり(目的)で居住しているのですから、特段の事情(例えば、契約で返還時期を定めてあるとか、あなたが亡き長男の相続人との信頼関係を著しく裏切る行為をした等)がない限り、あなたは目的に従った使用収益が終わっていないとして今後も無償で建物に居住することができるでしょう。


「長男に全財産相続させる遺言の効力は?弟に減殺請求の権利」

質問

 父は、長男の私に全財産を相続させる遺言を残して、半年前に亡くなりました。相続人は母と私、弟の3人ですが、母も2ヵ月前に亡くなりました。このたび、弟は、父の遺言について、自分の遺留分のほか、亡くなった母の遺留分も併せて私に遺留分減殺請求をしてきました。弟は、亡き母の遺留分も請求できるのでしょうか。

回答

 全財産をあなたに相続させる父の遺言は、他の相続人である母と弟の遺留分を侵害しています(民法1028条)。

 したがって、弟さんは自分の遺留分8分の1(遺産の1/2×子の相続分1/2÷子の数2)を、母は配偶者の遺留分4分の1(遺産の1/2×配偶者の相続分1/2)を限度として、受遺者であるあなたに遺留分減殺請求をすることができます(民法900条ほか)。

 ところが、母は、あなたに対して遺留分減殺請求権を行使しないまま、父の死亡後に死亡しています。そうすると、母があなたに対して有していた遺留分減殺請求権は、母の相続人であるあなたと弟さんが2分の1ずつ相続することになります(民法1031条)。

 この結果、弟さんは、あなたに対して、自分の遺留分8分の1と、亡母の遺留分4分の1の2分の1すなわち8分の1を併せて減殺請求することができます。

 母は生前あなたに遺留分を請求する意思はなかったと考えられる場合でも、母の遺留分放棄書があるなど、母が遺留分を放棄したことを裏付ける確実な証拠がない以上、これを阻止することはできないでしょう。

(弁護士 長島佑享)