父の遺言に指印が押されていた?自筆証書として有効
質問
父が亡くなり、金庫の中を調べたら、父の自筆証書遺言が出てきました。遺言書は、冒頭に「遺言書」との標題と、遺言本文、日付、氏名が書かれ、押印の代わりに指印が押されています。指印による遺言書も有効でしょうか。
回答
民法は「自筆証書遺言によって遺言するには、遺言者が遺言の全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」(民法968条1項)と規定しています。したがって、押印のない自筆証書遺言は無効であり、遺言の効力は生じません。
では、遺言者が印章に代えて拇印その他の指印を押捺した場合、遺言の効力はどうなるかが問題となります。
指印であると、通常、押印者の死亡後は対照すべき印影がなく、遺言者本人の指印かどうかを確認することは困難です。他方、自筆証書遺言に使用される印章も何ら制限がないため、印章による押印であっても、それが遺言者本人によるものであることを確認できない場合が少なくありません。
そこで、指印による自筆証書遺言について、最高裁は「自筆証書によって遺言するには、遺言者が遺言の全文、日付及び氏名を自書した上、押印することを要するが、右にいう「押印」としては、遺言者が印章に代えて拇印その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺することをもって足りると解するのが相当である」(平成元年2月16日判決)と判示し、指印による遺言も有効であるとしました。
しかし、紛争予防の観点からみると、指印ではなく、対照用の印影が保存されている実印、銀行届出印等を使用することが望ましいです。
独居の遺産友人に贈りたい?遺言書で意思明確に
質問
私は一人っ子で、妻も子どももなく、両親も亡くなっています。相続人がいないので、私の財産は長年お世話になった友人Bに残してあげ、お葬式など死亡後の事務をBにお願いしたいと考えています。どのようにすればよいでしょうか。
回答
相続人がいない場合には、相続財産は、最終的には国庫に帰属することになります(民法959条)。
特別縁故者に相続財産を分与する制度(民法958条)もありますが、この制度を利用するには、特別縁故者が家庭裁判所に「相続財産の分与の申し立てをしなければなりませんし、特別の縁故があった者に該当するか否か、相続財産を分与することが相当か否かの判断も、裁判所の裁量に委ねられます。
このため、身寄りのない者が、「自分の財産が国庫に帰属してしまうくらいなら、お世話になった人に確実に財産を残してあげ、その人にお葬式など死後のもろもろの事務を託したい」という場合には、次のように遺言をしておくとよいでしょう。
第1条 | 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、友人B(住所○○県○○市○○町○○番地。昭和○○年○月○日生)に包括して遺贈する。 | |
第2条 | Bは、前条の遺贈の負担として、遺言者の葬儀及び○○家の永代供養を実施するものとする。 | |
第3条 | 遺言者は、本遺言の執行者として、Bを指定する。 | |
第4条 | 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を付与する。 1. 不動産、預貯金、その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し 2. 貸金庫の開扉、解約及び内容物の取り出し 3. その他本遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をすること。 |