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法律相談

養子の子の養親に対する代襲相続権ー出生日と養子縁組日の前後で扱いが異なる

質問

 わたしの父(「A」といいます)は、昭和60年3月1日に子どものいない伯母(父Aの姉で「B女」といいます)の養子になりました。父が伯母の養子になった当時、わたしは2歳でしたが、昭和63年にわたしの弟(「C男」といいます)が生れました。ところが、その後父Aが病死し、父Aが亡くなってから3年後に伯母のB女も死亡しました。この場合、わたしと弟のC男は、亡き父Aの代襲相続人として、伯母(B女)の遺産を相続することはできますか。

回答

 あなたと弟C男の父親であるAは、伯母のB女と養子縁組をした昭和60年3月1日から、実子と同様にB女の子としての身分を取得します(民法809条)。

 したがって、B女が死亡すると、Aは子として亡きB女の相続人として同人の遺産を相続する権利を取得します(民法887条1項)。

 また、逆に、AがB女よりも先に死亡し、その後にB女が死亡した場合には、Aの子どもが代襲相続人としてB女の遺産を相続する権利を取得します(民法887条2項)。

 ただし、この場合、Aの子であるあなたと弟のC男が代襲相続人としてB女の遺産を相続するためには、B女の「直系卑属」であることが必要となります(同条2項但書)。

 直系卑属とは、子・孫・曾孫など自分よりも後の世代で血統が親子の関係で続いている系統ということです。養子も直系卑属に含まれます。

 そこで、問題となるのは、Aの子であるあなたとC男が、父Aの養親であるB女の直系卑属(孫)にあたるかどうかということです。あなたは、父Aと伯母のB女が養子縁組を結ぶ以前に生れています。弟のC男は、父AがB女と養子縁組を結んだ後に生れています。

 そうすると、あなたは、父親のAがB女の子としての身分を取得する前に生れていますから、あなたはB女の直系卑属(孫)ではないことになります。その理由としては、養子縁組が効力を生じるのは、養子縁組がなされた日から将来に向ってであり(将来効)、あなたの出生時に遡って効力を生じるものではないからです(非遡及効)。したがって、あなたは、父Aの代襲相続人として、B女の遺産を相続することはできません。

 他方、あなたの弟であるC男は、父AとB女が養子縁組を結んだ日以後に生れていますから、C男が生れたときには既に父AはB女の子としての身分を取得していましたから、C男はB女の直系卑属(孫)にあたることになります。したがって、C男は、亡き父Aの代襲相続人として、B女の遺産を相続することができます。

 このように、養子の子どもが亡き養子の代襲相続人として、養親の遺産を相続することができるか否かについては、養子の子が生まれた日と、養子と養親との間で養子縁組が結ばれた日を比較して、どちらが先かによって結論が異なることになります。

(弁護士 長島佑享)