借用証とらずに金銭を貸したが、返してくれない。借主に債務承認、内入れ弁済を求める
質問
私は、友人から頼まれて、300万円を現金で貸し渡しました。すぐに返すと言うので、借用証はもらいませんでした。ところが、その後、再三催促をしても「お金がない」の一点張りで、一向に返してくれません。どうしたらよいでしょうか。
回答
お金を現金で貸し渡した場合、借用証がないと、金銭の貸し渡しを証明する確実な証拠が存在しないため、その回収は困難になることが多いです。
借り主が十分信用できる人であっても、金銭を貸す場合は、必ず、借用証をとっておくことが大切です。
まず、貸し主としては、借り主から「貴殿より平成○○年○○月○○日に300万円を借り受け、本日現在、同債務を負担していることを承認します。」のように、借入金債務を負担していることを承認する「債務確認書」を差し入れてもらうのがよいでしょう。そして債務確認書の中に、返済期日や利息の有無についても書き入れてもらえば、なおよいでしょう。そうすれば、あなたは友人に300万円を貸したことについて確実な証拠を確保することができますし、貸付金の消滅時効(10年です。民法167条1項)の進行を阻止(時効の中断。民法147条三号)することもできるので安心です。
借り主から債務確認書の差し入れを拒否された場合には、貸付金の一部弁済(内入れ)を求めましょう。借り主も実際に生活はできているのですから、誠意さえあれば、小額の内入れであればできるはずです。たとえ1000円でもよいですから、一部弁済を求めましょう。借り主が一部弁済したときは領収書を発行し、その但書きには300万円の一部弁済であることを明らかにするため「平成○○年○○月○○日付け貸付金300万円の内入れとして。」と記載します。
借り主から一部弁済があると、借り主は借入金300万円の全額について債務を承認したことになります。従って、一部弁済をしてもらえれば、あなたは友人に300万円を貸し渡したことの証拠を確保できますし、消滅時効の進行を阻止(時効の中断)することもできます。
借り主があなたに債務確認書を差し入れず、一部弁済にも応じない場合には、借り主に対して内容証明郵便(配達証明付き)により、返済期限を定めて、貸付金の返済を請求します。
それにもかかわらず、借り主が借入金を返済せず、かつ、誠意のある返答もしない場合には、借り主が任意に返済することは期待できないでしょう。従って、その場合には、借り主を相手方として借り主の住所地を管轄する簡易裁判所に民事調停(貸金返還請求調停)の申立てをするか、貸し主の住所地を管轄する地方裁判所に借り主を被告として貸金請求訴訟を提起し、法的手続きによって回収を図る以外にないでしょう。
しかし、このような法的手段を講じても、300万円の貸し付けを証明する確実な証拠が存在しない場合、借り主から借り入れを否認されると、その立証は困難となるうえ、借り主に返済能力のないことも十分考えられるため、貸付金を回収することはかなり困難が予想されます。
(弁護士 長島佑享)