離婚した兄から財産遺贈、兄の子の権利は?遺留分2分の1戻る
質問
独身の兄には、離婚した妻との間に2人の子どもがいますが、離婚後は一切交信がありません。その兄が昨年病死しました。兄は弟の私に全財産を遺贈する遺言書を残しています。ところが、先日、兄の子ども2人から私に遺留分減殺請求の通知書が届きました。どのようにしたらよいでしょうか。
回答
亡き兄の相続人は兄の子ども2人だけです(民法887条)。弟のあなたは、兄に子どもがいる場合には、兄の相続人となることはできません(民法889条二号)。
一方、子どもがいるにもかかわらず、兄が相続人ではないあなたに財産全部を遺贈する遺言も法律上有効な遺言です(民法964条)。したがって、あなたは、遺言により、亡兄の全財産を取得することができます。
しかし、被相続人である兄の子には、兄の財産について「遺留分」が認められています(民法1028条)。遺留分とは、被相続人(兄)が贈与したり、遺贈したりした財産のうち取り戻すことのできる一定割合、ということです。子どもの遺留分について民法は、子の人数の多少に関係なく、一律に「被相続人の財産の2分の1」と定めています(民法1028条二号)。
したがって、あなたが亡兄の子2人から遺留分減殺請求を受けると、あなたは亡兄の子2人に亡兄の財産の2分の1(子1人当たり4分の1)を、遺留分として返還しなければなりません。遺留分として返還するとは、具体的には、亡兄の財産があなたと亡兄の子との共有財産(その持ち分の割合は、あなたが2分の1、亡兄の子がそれぞれ4分の1ずつ)になるということです(民法249条)。そして共有財産であると、共有者全員の同意がないかぎり、財産を単独で使用収益することはできませんので、これを分割(共有状態の解消)することが必要となります(「共有物の分割」)。
この共有財産の分割については、あなたと亡兄の子との間で話し合いで解決できれば問題ありませんが、話し合いによる解決ができない場合には、家庭裁判所の調停(遺留分減殺調停)または地方裁判所の訴訟(共有物分割請求事件)により法的解決を図る以外ありません。その場合は、亡兄の財産内容を明確にするため財産目録を作成することが必要です。また、財産(特に不動産)の評価については相続開始時(兄の死亡時)における時価(取引価額)を基準とします。時価額について双方の合意ができればその額を基準としますが、合意できないときは不動産鑑定士による鑑定価額と遺留分(持ち分割合)にもとづいて、亡兄の財産をどのように分けるか協議、あるいは調停または訴訟により解決していくことになります。
(弁護士 長島佑享)