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法律相談

父の遺産につき弟が法外な要求。妹から相続分譲渡を受けて遺産分割調停の申立てを

質問

 父が死亡し、相続人は私たち子ども3人です。遺産について、妹は「はんこ代をもらえば遺産はいらない」と言ってくれますが、弟が法外な要求をするため協議がまとまりません。遺産分割調停を申し立てたいのですが、遠方に住む妹に裁判所に出頭させるのは気の毒です。よい方法はありませんか。

回答

 遺産分割協議は、相続人全員の合意がないと成立しません。弟が法外な要求をするため合意できないのであれば、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停または審判で解決を図るのがよいでしょう。

 遺産分割調停は、相手方(妹、弟)の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。妹と弟の住所地を管轄する裁判所が異なる場合には、そのどちらかの裁判所に申し立てればよいです。

 妹が「はんこ代をもらえば遺産はいらない」という場合でも、妹を除外して弟だけを相手方にして申し立てることはできません。必ず相続人全員、従って妹も当事者(申立人または相手方)に加えなければなりません。

 ただ、妹が「はんこ代をもらえば遺産はいらない」で納得するのであれば、あなたは妹にはんこ代を支払い、あるいは支払うことを約束して、妹からその相続分(3分の1)を譲り受けてしまえば、妹の相続分がなくなるため、妹は裁判所に出頭する必要はありません。あなた(相続分3分の2)と弟(相続分3分の1)が裁判所に出頭し、両者で遺産分割調停または審判を進めればよいことになります。ですから、あなたは、妹から相続分の譲渡を受けたうえで、
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるのがよいでしょう。

 相続分の譲渡を受けるには、あなた(譲り受け人)と妹(譲り渡し人)との間で「相続分譲渡証書」(実印、印鑑証明書付き)を作成し、かつ、妹に裁判所の遺産分割手続きから脱退する旨の「脱退届」(実印)を作成してもらい、それらを、家庭裁判所に提出すればよいです。

(弁護士 長島佑享)