子どものいない妻の相続は? ─亡夫の兄弟らと共同相続
質問
わたしたち夫婦には子どもがいません。先日夫が亡くなり、遺産は居宅、農地、預貯金などです。わたしは夫の財産を一人占めすることができますか。将来わたしが死んだ時、財産は誰のものになりますか。
回答
夫が亡くなった場合、夫に子がいないと、夫の財産は、妻と夫の親(養父母を含みます)が共同相続し、その相続分は、妻が3分の2、親が3分の1です(民法900条2号)。親が複数いると、この3分の1を均しく分け合うことになります。
夫の親がすでに亡くなっている場合は、妻と夫の兄弟姉妹(亡くなっていれば甥=おい、姪=めい)が夫の財産を共同相続し(同法900条3号)、その相続分は、妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。兄弟姉妹が複数いると、この4分の1を均しく分け合うことになります。
夫に子、親、兄弟姉妹(甥姪も)ともいない場合は、相続人は妻だけとなり、あなたは夫の全財産を単独で相続することができます(同法890条)。
このように、夫に子がいない場合に夫の親あるいは兄弟姉妹(亡くなっていれば甥姪)がいると、妻は夫の財産を独占(一人占め)することはできませんが、夫が「妻に全財産を相続させる」遺言をしてあれば、妻は夫の全財産を取得することができます。(ただ、夫の親から遺留分を請求されることはあります。しかし、兄弟姉妹には遺留分はないので、兄弟姉妹から遺留分を請求されることはありません(同法1028条)。
将来、あなたが亡くなった時、あなたの財産は、あなたの子がいればその子が、子がいなければあなたの親(養父母を含みます)が、親もいなければあなたの兄弟姉妹(亡くなっていれば甥姪)が財産を相続します。兄弟姉妹(亡くなっていれば甥姪)もいない場合には、相続人がいないことになりますので、あなたの財産は国家のものとなります(同法959条)。
ですから、あなたが死後自分の財産の行方を決めておきたいときは、あなたの後継者を決めて養子縁組を結ぶか、あるいは遺言を作成して死後の財産処分(例えば「私の全財産を○○○○に遺贈する」など)を定めておくとよいでしょう。
なお、相続人がいない場合には、あなたの身の回りの世話をしたり、経済的援助をした者がいれば、その者が家庭裁判所に「特別縁故者に対する相続財産の分与」の申立てをすれば、その貢献の程度に応じて、亡きあなたの財産の全部または一部を分与してもらうことができます(同法958条の3)。
(弁護士 長島佑享)