JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

貸家内がゴミ屋敷状態 契約解除して立退き要求する

質問

 貸家経営をしています。そのうちの一軒が居室内に空き缶、空き瓶等のゴミを放置して、ゴミ屋敷になっています。これまでに何度も片付けるように注意しましたが、一向に片付けません。役所に苦情を述べて注意してもらいましたが、何ら対応しません。衛生上もよくないので、ゴミを撤去してもらいたいのですが、どのようにしたらよいでしょうか。

回答

 借り主が貸室内に空き缶、空き瓶等のゴミを放置しているとしても、それが多少不衛生であるという程度であるならば、家主は賃貸借契約を解除して、借り主を貸家から立退き(明け渡し)させることはできません。

 しかし、家主がゴミを片付けるよう再三注意したにもかかわらず、借り主がこれを改善することなく、長期にわたり、貸家内に社会常識の範囲をはるかに超える大量のゴミを放置(ゴミ屋敷状態)するといった非常識な行為があった場合には、衛生上問題があるだけでなく、火災発生の危険性もあり、家主のみならず近隣住民にも多大な迷惑を及ぼしていると考えられます。

 したがって、そのような常識では考えられない異常な状態になっている場合には、建物賃貸借契約における信頼関係を破壊する義務違反(債務不覆行)があるものとして、家主は、借り主に対して賃貸借契約を解除して貸家の明け渡し(立退き)を求めることができると考えられます。

 判例も、「確かに、信頼関係を基礎とする継続的な賃貸借契約の性質上、貸室内におけるゴミ放置状態が多少不潔であるからといって、そのことが直ちに賃貸借契約の解除事由を構成するということはできない。しかしながら、本件では、賃貸人から再三の注意を受けていたにもかかわらず、事態を改善することなく、2年以上の長期にわたって、居室内に社会常識の範囲をはるかに超える著しく多量のゴミを放置するといった非常識な行為は、衛生面で問題があるだけでなく、火災が生じるなどの危険性もあることから、原告(家主)やその家族及び近隣の住民に与える迷惑は多大なものであるといえるのであって、このことは、賃貸借契約の解除事由を優に構成するものといわざるを得ない。」として、家主が賃貸借契約を解除して、貸家の明け渡し(立退き)を求めることができることを認めています(東京地裁平成10年6月26日判決)。

 ですから、あなたの場合も、再三注意したのに借り主が事態を改善することなく、長期にわたり、居室内にゴミを積み上げる等ゴミ屋敷状態にしているのであれば、賃貸借契約を解除して、借り主に貸家の明け渡しを求めることができるでしょう。

 そして借り主が貸家の明け渡し(立退き)に応じないときは、借り主を被告にして裁判所に「家屋明渡請求の訴え」を提起し、その勝訴判決にもとづいて、明け渡しの強制執行をすればよいでしょう。その場合、ゴミの処分に要した費用は、借り主に請求することができます。ただ、借り主に費用を負担するだけの資力がない場合には、家主が費用負担する以外ありません。


(弁護士 長島佑享)