行方不明の長男の一人息子にも財産を相続させたい ─養子縁組と遺言で解決
質問
わたしは、子どもが3人います。妻はすでに亡くなっています。子どものうち、長男は行方不明です。長男には一人息子がいて、その子が農業を継ぐと言っています。わたしは、長男を除いた2人の子どもと、長男の一人息子(孫)に財産を均等に相続させたいのですが、どのようにすればよいでしょうか。
回答
あなたが亡くなった場合、その相続人は、あなたの子ども3人だけです。
長男の一人息子(孫)は、長男があなた(祖父)よりも先に死亡した場合に、長男の代襲相続人として、亡き長男に代ってあなた(祖父)の財産を相続する権利が生じます(民法887条2項)。
しかし、長男が行方不明(生死不明の状態)であるというだけでは、その長男を「死亡したもの」として扱うことはできません(ただし、生死不明の長男について、家庭裁判所より「失踪宣告」が下されれば、長男は死亡したものとみなされるため(民法31条)、長男の一人息子が代襲相続人としてあなたの財産を相続することができます)。したがって、長男の一人息子は長男について失踪宣告がない以上、あなたの相続人ではありませんから、あなた(祖父)の財産を相続することはできないのです。
あなたが、長男以外の2人の子どもと、行方不明の長男の一人息子に財産を均等に相続させるためには、まず、あなたと長男の一人息子(孫)との間で養子縁組を結び、長男の一人息子を、あなたの養子にすることが必要です。(養子縁組届を市町村役場に提出する)。養子縁組をした上で、あなたが「長男○○を除く2人の実子○○と○○及び養子○○(長男の一人息子)に財産を均等に相続させる」内容の遺言書を作成することが必要です。そうすれば、あなたはこの3人に財産を平等に相続させたいという希望を実現することができるでしょう。(ただ、将来、行方不明の長男が出現した場合、3人に対して遺留分減殺請求してくることは考えられます)。
また、あなたが長男の一人息子を養子にしなくても(養子縁組を結ばなくても)、あなたが「長男○○を除く2人の実子○○と○○及び長男○○の子○○に財産を均等に遺贈する」内容の遺言書を作成しておけば、その遺言により、あなたの財産を3人に平等に取得させることもできます。なお、この場合、「相続させる」ではなく、「遺贈する」としたのは、長男の一人息子はあなたの相続人ではないために、あなたの財産を「相続させる」ことができないからです。
(弁護士 長島佑享)