私道上の自動車事故で賠償責任を問われた ─私道管理者には責任なし
質問
私道で近くの子どもが遊んでいました。そこに通り抜けようとした車が入ってきて、ひいてしまいました。特に車をガードする措置はしていませんでした。管理者として責任がある、と言われました。私にも責任はあるのでしょうか?
回答
通り抜けるために私道に入って子どもをひいてしまった自動車の運転者が、被害者(子ども)に対して損害賠償責任を負うのは言うまでもありません(民法709条)。
また、自動車の所有者(「運行供用者」といいます)や、業務中に事故を起こした運転者の雇い主も、運転者と共同して損害賠償責任を負うことになります(自賠法3条、民法715条)。
私道(私有地に設けた道路)の所有者(共有の場合は共有者全員)は、私道を維持・管理する責任があります。道路が陥没したり、舗装に亀裂が生じたときは、自己の費用負担でこれを補修する責任があります(ただし、整備費用を自治体が助成・補助するケースもあります)。従って、道路陥没や亀裂が原因で発生した事故については、私道所有者は損害賠償責任を負うことがあります(民法717条)。
あなたは、自動車の進入を防止する措置を取らなかったようですが、そのことが私道所有者としての維持・管理義務違反に当たる場合は、損害賠償責任を負うことになります(民法717条)。
私道には、「一般の交通の用に供される私道(道路位置指定を受けた道路や、道路位置指定を受けていなくても公衆の通行を容認している道路。このような私道は公衆の通行を禁止することができない)」と、「一般の通行が特に制限されている私道(私道所有者などの限られた者だけが通行している道路)」とがあります。
しかし、いずれの私道であっても、特段の事情(例えば、通り抜け車両が頻繁に進入し、日常的に生活者の通行等が危険な状態にあるなど)がないかぎり、私道の所有者が車両の進入防止措置を講じなかったとしても、損害賠償責任を問われることはないと考えられます。
従って、通り抜け自動車が私道上で遊んでいた子どもをひいて怪我を負わせても、特段の事情がないかぎり、私道所有者であるあなたが進入防止措置を講じなかったとしても、そのことを理由に損害賠償責任を問われることはないでしょう。
(弁護士 長島佑享)