畑仕事に便利な農具
園芸研究家●成松次郎
農具はかつての「村の鍛冶屋さん」が、農作業の用途や土質に適した形に作り上げた道具です。そのため地域によって形状がさまざま。そろえておきたい代表的な農具を紹介します。
土起こし作業(図1)
荒れた畑は土が固く締まり、草の根がはびこっています。このような畑を起こすには、備中鍬(ぐわ)か唐鍬(ぐわ)を使います。備中鍬は3、4本の爪に分かれ、粘土質の畑でも土離れの良い刃型で、芋の掘り起こしにも重宝します。唐鍬は1枚の細身で肉厚の刃で、頑丈なので荒起こしに向きます。
スコップは土を運ぶ、穴を掘る、堆肥・肥料を土と混ぜるなどに使い、先のとがった剣先スコップは穴掘り作業に、先が平らな角スコップは運ぶ、混ぜる作業に適しています。
畝立て作業(図2)
平鍬(くわ)は1枚の刃が付き、耕す、整地をする、溝を掘る、畝を立てる、土寄せするなどほとんどの作業がこれ1本でできます。平鍬の背側や側面を使って、整地作業もできます。長さや重さが体や体力などに合った物を選びましょう。農具を一つ選ぶとすれば、万能の平鍬です。また、効率良く整地作業をするには、熊手のようなレーキを使います。土中の雑草の根なども除去できます。最後に、畝をきれいに仕上げるには、板切れ(端材)を使い、表面をならします。
除草、土寄せ作業(図3)
草削りには、片手鍬(ぐわ)、ホーとも呼ばれる半月形や三角形の軽量な鍬があります。柄が長く立ち姿勢で作業ができる三角鍬(ぐわ)は、土寄せ、溝切りにも使えます。
草刈りには平鎌を使います。伸びてきた草を片手でつかみ、鎌先を地際から手前に引いて切断します。のこぎり鎌は、堅い草を刈るのに向いています。
※関東南部以西の平たん地を基準に記事を作成しています。
成松次郎(なりまつじろう)
神奈川県農業技術センター等で野菜の研究と技術指導に従事後、(一社)日本施設園芸協会で施設園芸及び加工・業務用野菜の生産・流通振興に携わる。現在、園芸研究家。