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税務相談

土地代金を家族名義とした場合の贈与税と相続税

 昨年六月に亡くなった父は、二十五年前に土地を譲渡し納税後の手取額を私と母親名義の定期貯金にしていました。私たちはそのことを父親から知らされており貯金の存在を承知しています。相続税の申告にあたり税理士から当時のいきさつを聞かれましたが、満期の書換などはすべて父がやっておりましたので、もらった記憶はあいまいです。

 二人の名義にした貯金は総額で八千万円でしたが贈与税の申告書は提出しておりません。七年前の贈与については申告義務がなくなると聞いていますが、ほんとうでしょうか?この貯金を相続財産に計上する必要があるのでしょうか?



回答

生前贈与に厳しい相続税

 相続税は亡くなった人が生涯に取得し築いてきた財産に対して課税するところから、財産を生前に贈与された人には相続税より高い税率の贈与税を課税したり、相続や遺贈によって遺産を取得した人が相続の開始前三年以内に、被相続人から贈与を受けている場合には、その贈与を受けた財産を相続財産に加算して相続税を計算し、納付した贈与税額を控除することにしています。

親子間の名義書換と贈与税

 一家団内では生活費や教育費などとする金銭の贈与が日常的ですが、相続税を意識して行われるものが多く、相続税の税務調査でよく問題になるところです。

 土地を売ったとき、多額の保険金を受け取ったとき、退職金が支給されたとき、まとまった株の売買を行ったとき、受け取った年金が貯まったときに預貯金などを通して財産の移転が行われるものです。家族の名義にして少しでも相続税を軽くしておこうというのが動機で、被相続人の財産を減らすことに腐心するあまり、目的がはっきりせず贈与の実体がないので贈与税の申告を失念してしまうのです。

家族名義預金は相続財産

 贈与は、贈与する人の「あげます」、もらう人の「いただきます」の合意によって成立する契約ですから、自己の名義になった貯金の存在は承知するも、自由に使えなければ貰った人にその認識が薄く、贈与を受けたことにはならないのです。したがって、被相続人が管理してきた家族名義の定期貯金は、どんなに古いものであっても贈与した財産にはならず、本来の相続財産として申告する必要があります。

名義貯金を除外して申告した場合

 この名義貯金を除外して相続税を申告してしまった場合は、自主的に修正申告書を提出することができます。この場合は過少申告加算税(財産や税額を実際より少なく申告した場合の制裁金)は免れますが、延滞税(申告期限から納付した日まで増えた税額の年四・三%の割合の利子相当額)を納付しなければなりません。税務調査によって名義預金であることが発見された場合は過少申告加算税(増えた税額の十%または十五%相当額)と延滞税を納付しなければなりません。申告すべきことを知って除外した場合は重加算税(増えた税額の三十五%相当額)と延滞税が課税されますので留意してください。

贈与税を申告しなかったとき

 仮に、父親が妻や子の名義にした貯金証書を妻らに渡してその裁量権が移っているのに、妻らが贈与税を申告していなかった場合はどうか。税務署長の課税権は原則として七年ですが決定(申告書を提出する義務のある人が申告書を提出しない場合に行う税務署長の処分できるのは六年間で、偽りその他不正行為によって贈与税の課税を免れようと申告書を提出しなかった場合は七年間とされています。したがって、税務署長は七年より前の贈与税については課税できないことになります。ご質問の場合は贈与したことにはならないので、七年過ぎていても相続税が課税されることになりますので留意して下さい。

(税理士 西田 芳秋)